転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「でも専務、あなたの立場上、隣に置いておく人間はよく選んだ方がいいと思います。この方は見た目は少し整っている方かもしれないけど、もしそれだけで選んだのならもっと良い人材をお探になった方がいいかと」
少し整っているとは失礼な。少なくとも、目黒さんよりは整っている自信がある。
けれど彼女は私を横目で一瞥すると、勝ち誇った表情で髪をかきあげた。
「お気遣いありがとうございます。ですが岬は十分よく働いてくれていますので…」
「もしこの方が使えないなって思ったら、いつでも私に声を掛けてくださいね」
待ってます。と、つり目がちの目を細めた彼女は、再び私を睨むと踵を返し、どこかへ行ってしまった。
「紗良、気を悪くさせてごめん」
「どうして専務が謝るんですか」
「あの人いつもああやって俺の周りの人間に攻撃するから。なるべく避けてたつもりなんだけど」
「私は大丈夫ですよ。ああいう妬みや僻みは言われ慣れてきているので、今更怯みませんし」
それに無愛想なのは自覚している。コミ力抜群の逸生さんの隣は似合わないってことも。
だから彼女の気持ちも分かるし逸生さんが謝ることではないのに、彼は申し訳なさそうに「あの人の言葉は気にしなくていいから」と眉を下げた。
私は本当に平気なのに、逸生さんが傷付いた顔をするから何だか胸が痛む。
寧ろ私は嬉しかった。こういう場面に遭遇した時、私はいつもひとりだったから。
だからさりげなく庇ってくれた彼が、とても男らしく感じた。