転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「あーなるほど」と納得した小山さんは、突然私に近付いてきたかと思うと、続けて口を開いた。
「初めてのパーティー、疲れただろ」
「はい、とても」
「あいつ自由だから振り回されてない?大丈夫?」
「そうですね…今のところは。むしろ昨日は彼のコミュ力を目の当たりにして、少し見直しました」
「分かる。あの男、ほんとコミュ力おばけだろ?でもここにいたら動画しか見てないから、ああいう所に行かないと分からないんだよな」
「そうですね。正直、かなり驚きました」
「でもさ、あいつ人使いも荒いだろ?あとデリカシーのないことも平気で言うから、そういう時は一発殴って黙らせた方がいいよ」
この人は一体今までどれだけ逸生さんに振り回されてきたのだろう。でも、そう言いながらも呆れたように笑うから、なんだかんだ彼のことが大好きなんだろうけど。
「いつも気にかけてくださってありがとうございます。確かに自由だなって思う時はあるし、小馬鹿にされたりはしますけど」
「…あのバカ」
「でも私、顔色をうかがわれるくらいなら、ズバッといじってもらう方が楽なので」
「え、そうなんだ。意外だな」
私の言葉にきょとんとする小山さんを見て、この人の目にも、私はドSに映っているのだと察した。
「普段から無愛想なので意外かもしれませんが、気を遣われるとこっちも気を遣うというか」
「まぁ、それは確かにそう」
「そういえば小学生の頃、通りすがりの男の子に、ズバッと“おもんない”って言われたことがあって」
「……え?」
「私、昔から近寄り難いって言われてて、でもその子は常に喧嘩腰で絡んできて…だけど何故か、嫌味っぽくないというか、素直なその子の態度に安心した自分がいて」
ふと、昔の記憶が蘇ってきた。
もうかなり昔のことだから、曖昧な部分はあるけれど。どこか寂しげな瞳をしている子だな、と子供ながらに思った記憶がある。
あの子はいま、どこで何しているのだろうか。