転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「在庫がどうか分からないけど、最悪違う種類でもいいからかき集めてもらおう。普段から利用してる会社だから少々無理は通じるだろ」
小山さんがそう言うと、百合子さんが「急いで連絡を入れます!」と受話器を取る。
「では私は運転手に連絡を…」
「いや、いい。二人で行こう」
デスクに置いていたスマホを取ろうとした時、突如耳元で響いたのは逸生さんの声だった。
「え?」と振り返れば、ゆるりと口角を上げた彼と至近距離で視線がぶつかる。
「紗良が勝手にスケジュール入れた罰として、ふたりきりで行くぞ」
「ば、罰…?」
「せっかくだから、ドライブデートしよ」
この非常事態にデートだなんてと、呑気な彼を怪訝に思う反面、罰というワードに、ぞくりと身体が反応してしまった。
デートが罰って、一体なんなの。もしかして私が運転しろってこと?長距離運転はしんどいからってことなの?なにそのドS発言。…好き。
でも、それならきっと大丈夫だ。これでも一応免許は持ってる。体力もまあまああると思う。
ただ、2年くらいまともに運転してないけど。
「分かりました。急ぎましょう」
でもそんな事は言ってられない。事故を起こして逸生さんが怪我でもしたらそれこそクビだ。
実は彼氏とデートというのは生まれて初めてだけど。今は浮かれている場合じゃない。
「全集中するので任せてください」
「…え?全…?」
とにかく急がなきゃ。