転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
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仕事中にデートに誘う男、結構やばくないか?
せっかく遠くに行くのならふたりきりがいいと、ふと思いついたのはいいものの、会社の非常事態に「ドライブデートしよ」と誘った俺は、かなり頭がイカれてる。
しかも“勝手にスケジュールを入れた罰”という言い訳をして、紗良を悪者にするとか…自己中にも程があるだろ。
案の定、紗良は上司の命令に逆らえないのか、渋々首を縦に振った。
一応恋人なんだから、普通にデートに誘えばいいものの。どうして俺は、スマートに出来ないのか。
今回はさすがに嫌われたかと思ったけれど、紗良が俺を“人として好き”だと言ってくれて、心底安心した。その反面、男として見られていないことには軽く傷付いたけど。
「夜景見てると心が落ち着きますね」
隣で夜景に見入っている女を横目で見つめる。決してその口元が緩むことはないけれど、なんとなく彼女の纏う空気がいつもより柔らかいのが分かる。
こんな我儘な男に振り回されても、嫌な顔せず隣にいる紗良は本当にいいやつだと思う。
何をしていてもどの角度から見ても整った顔をしているけど、夜景をバックにした紗良は一段と綺麗に見えた。
「逸生さんはこういう所、よく来るんですか?」
それは今までに他の女と夜景デートしたのかを聞いてんのか?
そんな平然と、躊躇なく聞くなよ。俺は紗良が他の男とキスしたことがあるって聞いて、かなり心臓抉られたのに。
そりゃさすがにキスの経験がないなんて思ってなかったし、ある程度覚悟はしていたけど。紗良の口から聞くと、かなりパンチ力強かった。
しかもキスどころか、それなりに経験があると言っていたから…まぁ、うん。
分かっていたはずだけど…やっぱショックだ。