転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「でも俺、かなり自己中だけどな」
「確かに自由ですけど、でも不思議と思いやりも感じるんですよね」
紗良の言葉はストレートだ。あざとさがないから、スッと心に入ってくる。
俺は他の誰より紗良に褒められるのが、一番嬉しいかもしれない。
「逸生さんと、初めて恋人らしいことが出来たのも、ちょっと嬉しかったですよ」
「……」
「これからのために、何をしたら恋人らしくなるのか私も調べておきますね」
淡々と俺の心を揺さぶる台詞を吐く紗良に、もう我慢の限界まできていた。
「……紗良」
「はい」
考えるより先に紗良の腕を掴んだ俺は、覗き込むようにして視線を重ねる。
「もうひとつ、恋人らしいことしてもいい?」
至近距離で、少し驚いたような表情をした紗良にそう一言放った俺は、返事を聞く前に、頬に軽くキスを落とした。
「…怒るなよ」
きょとんとした顔で俺を見つめる紗良に、ぽつりと呟く。
頭がついていないのか、暫く瞬きをぱちぱちと繰り返した紗良は、漸く口を開いたかと思うと「…はい」と小さく零した。
その声でハッと我に返った俺は、自分の強引さにまた引いた。どうして返事を待たず行動に移してしまったのかと。
…どうか、嫌われていませんように。
「(ちょっと強引なキス…凄く、いいな)」