新そよ風に乗って 〜時の扉〜
エレベーターの階数押しボタンの上に貼られた社内案内板を見ると、地下2階は駐車場となっている。駐車場に何をしに行くのだろう?
しかし、私の心配をよそに高橋さんは迷うことなく1台の車に近づくと、ドアノブを掴んで車のロックを解除した。
「乗って」
えっ?
「乗って」と、言われても……。
「あの……」
「いいから」
助手席のドアを開けた高橋さんに促されるままに助手席に座ると、ドアを閉められてしまった。
何で今、車に乗らなければならないのだろう。それに、この車はいったい誰の……。
「高橋さん。何処に行くんですか?」
車のエンジンを掛けた運転席の高橋さんに向かって、訳が分からず抗議するような声で質問をぶつける。
「社会科見学?」
さも、茶化していますと言わんばかりの疑問符を付けた言い方が、妙に神経に障った。
「すみません。行き先もわからないまま、どなたのものなのかもわからないような車には乗れません」
「フッ……」
すると、高橋さんが少し俯きながら笑った。
「何がおかしいんですか? いくら私が新入社員だからといって、仕事中にドライブとか、あり得ませんよ。高橋さんは、私を試しているんですか?仕事に取り組む姿勢がちゃんと出来ているかとか、こういう行動でテストしたり……」
「誰が、ドライブだと言った?」
えっ?
「試す? お前を試したところで、誰が得をするんだ?」
高橋さん……。
先ほどの優しい眼差しとは打って変わって、鋭い視線が私を捉えている。怒っている? いつもなら矢島さんと呼ぶ高橋さんに、お前と言われてしまった。
「言っておくが、これは今日の就業の一環だ。ドライブでもなければ、テストでもない。これから、お前に会社の顔を見せに行く」
「会社の顔……ですか?」
会社の顔って、何?
「そうだ」
そう言うと、高橋さんは車を発進させた。
しかし、私の心配をよそに高橋さんは迷うことなく1台の車に近づくと、ドアノブを掴んで車のロックを解除した。
「乗って」
えっ?
「乗って」と、言われても……。
「あの……」
「いいから」
助手席のドアを開けた高橋さんに促されるままに助手席に座ると、ドアを閉められてしまった。
何で今、車に乗らなければならないのだろう。それに、この車はいったい誰の……。
「高橋さん。何処に行くんですか?」
車のエンジンを掛けた運転席の高橋さんに向かって、訳が分からず抗議するような声で質問をぶつける。
「社会科見学?」
さも、茶化していますと言わんばかりの疑問符を付けた言い方が、妙に神経に障った。
「すみません。行き先もわからないまま、どなたのものなのかもわからないような車には乗れません」
「フッ……」
すると、高橋さんが少し俯きながら笑った。
「何がおかしいんですか? いくら私が新入社員だからといって、仕事中にドライブとか、あり得ませんよ。高橋さんは、私を試しているんですか?仕事に取り組む姿勢がちゃんと出来ているかとか、こういう行動でテストしたり……」
「誰が、ドライブだと言った?」
えっ?
「試す? お前を試したところで、誰が得をするんだ?」
高橋さん……。
先ほどの優しい眼差しとは打って変わって、鋭い視線が私を捉えている。怒っている? いつもなら矢島さんと呼ぶ高橋さんに、お前と言われてしまった。
「言っておくが、これは今日の就業の一環だ。ドライブでもなければ、テストでもない。これから、お前に会社の顔を見せに行く」
「会社の顔……ですか?」
会社の顔って、何?
「そうだ」
そう言うと、高橋さんは車を発進させた。