新そよ風に乗って 〜時の扉〜
明良さんに呼ばれて、思わず背筋を正して返事をした。
「人は貴く、命は尊い。だけどその貴い時間をいかに過ごすかで、人生は違ってくると思うから」
「明良さん……」
何故か、こみ上げてくるものがあった。翼君とのことがあったからだろうか。否、それだけじゃない。明良さんの言葉のひとつ、ひとつが今の私の胸に突き刺さっていた。
「俺の仕事は、患者さんの人生の手助けをすること。陽子ちゃんの仕事は、会社の会計を監査すること」
「いえ、そ、そんな大それたことなんてしてません。ただ、高橋さんに言われたことをやっているだけで……」
「それでも、それは貴博の手助けをしているわけでしょ? 陽子ちゃんは、まだ社会に出て一ヶ月も経ってない。今は、貴博の手助けをするのが仕事。この先、もっと仕事を与えられた時、その本領を発揮すればいいんだから。貴い時間を無駄にしないためにもね。貴博は、その貴い時間を与えてくれる奴だから」
明良さん。
「あっ、明良さん。この先の信号の先のマンションです」
「了解」
話の途中だったが、マンションの前に着いてしまった。
「おまちどおさま」
「すみません。送って頂いて、ありがとうございました」
明良さんが、何故こんなことを私に言ったのか、よくわからなかった。だけど、明良さんは医者の仕事を誇りに思っている。それだけはわかった。
そして明良さんは、高橋さんは私に貴い時間を与えてくれる人と言った。それはいったい、どういう意味なんだろう。今なら、ちゃんと応えてくれるかな? 明良さんに聞いてみようかな。知りたかったこと……。
「陽子ちゃん。また、みんなで食事しようよ」
「は、はい。ありがとうございます。あの、明良さん」
「はいよ」
「あの……」
いざ、面と向かって聞くとなると、恥ずかしくなってしまい、言い淀んでしまった。
「陽子ちゃん。なあに?」
頑張って、勇気出して聞いてみようかな。ずっと、気になってたことだもの。
「あのですね……。お聞きしたいのですが、高橋さんは、本当に彼女はいらっしゃらないんですか? 本当は、いらっしゃいますよね?」
「……」
明良さん?
運転席の明良さんは、黙ったままこちらを見ている。
何か、聞いてはいけないことだったのかな? たかだか新入社員で、しかも仮配属で来た私が、そこまでプライベートに踏み込んではいけなかったのかもしれない。
「ご、ごめんなさい。明良さん。変なこと聞いてしまって。すみません。忘れて下さい。それじゃ」
「待って、陽子ちゃん」
エッ……。
「人は貴く、命は尊い。だけどその貴い時間をいかに過ごすかで、人生は違ってくると思うから」
「明良さん……」
何故か、こみ上げてくるものがあった。翼君とのことがあったからだろうか。否、それだけじゃない。明良さんの言葉のひとつ、ひとつが今の私の胸に突き刺さっていた。
「俺の仕事は、患者さんの人生の手助けをすること。陽子ちゃんの仕事は、会社の会計を監査すること」
「いえ、そ、そんな大それたことなんてしてません。ただ、高橋さんに言われたことをやっているだけで……」
「それでも、それは貴博の手助けをしているわけでしょ? 陽子ちゃんは、まだ社会に出て一ヶ月も経ってない。今は、貴博の手助けをするのが仕事。この先、もっと仕事を与えられた時、その本領を発揮すればいいんだから。貴い時間を無駄にしないためにもね。貴博は、その貴い時間を与えてくれる奴だから」
明良さん。
「あっ、明良さん。この先の信号の先のマンションです」
「了解」
話の途中だったが、マンションの前に着いてしまった。
「おまちどおさま」
「すみません。送って頂いて、ありがとうございました」
明良さんが、何故こんなことを私に言ったのか、よくわからなかった。だけど、明良さんは医者の仕事を誇りに思っている。それだけはわかった。
そして明良さんは、高橋さんは私に貴い時間を与えてくれる人と言った。それはいったい、どういう意味なんだろう。今なら、ちゃんと応えてくれるかな? 明良さんに聞いてみようかな。知りたかったこと……。
「陽子ちゃん。また、みんなで食事しようよ」
「は、はい。ありがとうございます。あの、明良さん」
「はいよ」
「あの……」
いざ、面と向かって聞くとなると、恥ずかしくなってしまい、言い淀んでしまった。
「陽子ちゃん。なあに?」
頑張って、勇気出して聞いてみようかな。ずっと、気になってたことだもの。
「あのですね……。お聞きしたいのですが、高橋さんは、本当に彼女はいらっしゃらないんですか? 本当は、いらっしゃいますよね?」
「……」
明良さん?
運転席の明良さんは、黙ったままこちらを見ている。
何か、聞いてはいけないことだったのかな? たかだか新入社員で、しかも仮配属で来た私が、そこまでプライベートに踏み込んではいけなかったのかもしれない。
「ご、ごめんなさい。明良さん。変なこと聞いてしまって。すみません。忘れて下さい。それじゃ」
「待って、陽子ちゃん」
エッ……。