新そよ風に乗って 〜時の扉〜
エッ……?
「明良が、また料理作るから食べに来て欲しいそうだ」
「えっ? えぇっ?」
「着いたぞ。降りて」
その時、ちょうど22階に着いて、エレベーターのドアが開いた。
「えっ? あっ、はい。あの……」
「そういうことだ」
そういうことって、どういうこと?
エレベーターを降りると、先に降りた私を抜かしていった高橋さんは、そのまま何事もなかったように前を歩いていくと、IDカードをスリットさせて事務所に入っていってしまった。
明良さんが、誘ってくれたの?
それを、高橋さんが私に伝言してくれて……。
どうしよう。何か、漫画の世界みたい。SPIの明良さんにお誘い受けて、それをまたSPIの高橋さんから伝言して貰えるなんて。
ちょっと前のことを思い出しただけで、ドキドキしている。少しだけ、はにかんだように涼しげな瞳で言った高橋さんの広い背中とスタイルの良さについ見入ってしまったのと、突然のことでお礼も何も言えなかったが、高橋さんの歩き方があまりにも様になっていて、そして何よりスーツがあれだけ似合う人もいないと実感していた。
IDカードをスリットして事務所に入ると、高橋さんはすでに席に着いていて、さっきのエレベーター内の会話のことなど忘れてしまったかのように、いつもと変わらない冷静な表情でパソコンを立ち上げていた。
もっとも、冷静でないのは私だけなのかもしれない。高橋さんにとって、あんな会話の一つや二つは日常的なことで、何とも感じていないのかもしれなかった。
ああ、まだ思い出しただけでドキドキする。
「矢島さん。おはようございます」
エッ……。
「お、おはようございます」
確か、この人は同期の近藤さん。主計の新人男子だった気がする。
「社内旅行の新人の出し物の件、聞いてる?」
「明良が、また料理作るから食べに来て欲しいそうだ」
「えっ? えぇっ?」
「着いたぞ。降りて」
その時、ちょうど22階に着いて、エレベーターのドアが開いた。
「えっ? あっ、はい。あの……」
「そういうことだ」
そういうことって、どういうこと?
エレベーターを降りると、先に降りた私を抜かしていった高橋さんは、そのまま何事もなかったように前を歩いていくと、IDカードをスリットさせて事務所に入っていってしまった。
明良さんが、誘ってくれたの?
それを、高橋さんが私に伝言してくれて……。
どうしよう。何か、漫画の世界みたい。SPIの明良さんにお誘い受けて、それをまたSPIの高橋さんから伝言して貰えるなんて。
ちょっと前のことを思い出しただけで、ドキドキしている。少しだけ、はにかんだように涼しげな瞳で言った高橋さんの広い背中とスタイルの良さについ見入ってしまったのと、突然のことでお礼も何も言えなかったが、高橋さんの歩き方があまりにも様になっていて、そして何よりスーツがあれだけ似合う人もいないと実感していた。
IDカードをスリットして事務所に入ると、高橋さんはすでに席に着いていて、さっきのエレベーター内の会話のことなど忘れてしまったかのように、いつもと変わらない冷静な表情でパソコンを立ち上げていた。
もっとも、冷静でないのは私だけなのかもしれない。高橋さんにとって、あんな会話の一つや二つは日常的なことで、何とも感じていないのかもしれなかった。
ああ、まだ思い出しただけでドキドキする。
「矢島さん。おはようございます」
エッ……。
「お、おはようございます」
確か、この人は同期の近藤さん。主計の新人男子だった気がする。
「社内旅行の新人の出し物の件、聞いてる?」