新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「は、はい」
「そういうことで同室だから、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「行こう。25階だって」
「はい」
ちょうど待機していたエレベーターに乗ると、誰も後から乗ってこなかったので、折原さんがドアを閉めて25階を押した。
「ああ、良かった。よりによって、何で黒沢さんの腰巾着と同じ部屋にならなきゃいけないのよ。それこそ、夜中に奇襲されて寝られやしない」
折原さん……。
エレベーターが25階に着き、降りて通路を歩いていると、エレベーターから一番遠い方に向かって若い部屋番号になっていた。
「2510、2508、もう直ぐね」
「はい。あっ……」
「ん? どうかした? おっ、高橋。お疲れ」
「お疲れ様」
折原さんがカードキーで部屋の鍵を開けながら、更に奥の部屋から出て来た高橋さんと挨拶を交わした。
高橋さんは、もう着替えて会場に向かおうとしているみたいだ。
「高橋さーん」
だ、誰?
「お部屋、そこなんですね。宴会終わったら、遊びに行ってもいいですか?」
土屋さん……。
「出た。スネーク女」
スネーク女?
「相変わらず、高橋狙いなんだ……。懲りない奴」
エッ……。
「あの……」
「ああ、大丈夫よ。高橋は、まったく興味ないと思うから。だってスネーク女だし」
「あっ、そ、そんな私は別に。その……スネーク女って、何ですか?」
そう折原さんに聞きながら、高橋さんと土屋さんの会話に耳を傾けていた。
「ハハッ……。矢島さんは、分かりやすい」
ハッ?
「プレッシャー掛けるためにも、黙って二人の会話を堂々と聞いてましょ」
「えっ?」
「だって、コソコソ立ち聞きとか悪趣味じゃない。だったら、正々堂々と会話聞いてますって態度で立っていた方がいいでしょう?」
折原さん……。
言い得て妙な理論に何故か納得しつつ、折原さんに習って身体を高橋さんと土屋さんの方におもむろに向けた。
「別に構いませんが、多分、ずっと宴会場で飲んでると思いますから、そちらでご一緒に」
高橋さんは、微笑みながら土屋さんと話している。高橋さんの私服は、チノパンにネイビーのポロシャツだった。今時のカーゴパンツでも、ロールアップパンツでもなかった。靴はローファー。これはスーツを着ていた時と一緒だ。だけど、何着ても似合うな。
「そうですか。それじゃ、それが終わった頃に伺いますね」
ハッ!
それが終わった頃にって……。
「出た。空気読めないスネーク」
エッ……。
「遠回しに部屋に来るなと断ってるのに、何でその応え?」
折原さんが独り言のように呟いたが、その声は意外と大きくて、声の通る折原さんの独り言が土屋さんに聞こえてしまわないかヒヤヒヤしていた。
「いや、部屋に戻ってきたら、きっと酔ってますから直ぐに寝ちゃうと思います」
「でも、せっかくだから、おやすみなさいぐらいは言いに来たいわ」
「スネーク、ハウス!」
「お、折原さん。聞こえますよ」
堪りかねて折原さんの袖を引っ張って、小声で話しかけた。
「ああ。ゴメン、ゴメン。バカらしいから、もう部屋入ろう」
「は、はい」
どうなるんだろう。土屋さんは、本当に高橋さんの部屋に夜中に行くのだろうか。何だか、心がざわざわして仕方がない。
「矢島さん。奥のベッド使って」
「でも……」
「そういうことで同室だから、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「行こう。25階だって」
「はい」
ちょうど待機していたエレベーターに乗ると、誰も後から乗ってこなかったので、折原さんがドアを閉めて25階を押した。
「ああ、良かった。よりによって、何で黒沢さんの腰巾着と同じ部屋にならなきゃいけないのよ。それこそ、夜中に奇襲されて寝られやしない」
折原さん……。
エレベーターが25階に着き、降りて通路を歩いていると、エレベーターから一番遠い方に向かって若い部屋番号になっていた。
「2510、2508、もう直ぐね」
「はい。あっ……」
「ん? どうかした? おっ、高橋。お疲れ」
「お疲れ様」
折原さんがカードキーで部屋の鍵を開けながら、更に奥の部屋から出て来た高橋さんと挨拶を交わした。
高橋さんは、もう着替えて会場に向かおうとしているみたいだ。
「高橋さーん」
だ、誰?
「お部屋、そこなんですね。宴会終わったら、遊びに行ってもいいですか?」
土屋さん……。
「出た。スネーク女」
スネーク女?
「相変わらず、高橋狙いなんだ……。懲りない奴」
エッ……。
「あの……」
「ああ、大丈夫よ。高橋は、まったく興味ないと思うから。だってスネーク女だし」
「あっ、そ、そんな私は別に。その……スネーク女って、何ですか?」
そう折原さんに聞きながら、高橋さんと土屋さんの会話に耳を傾けていた。
「ハハッ……。矢島さんは、分かりやすい」
ハッ?
「プレッシャー掛けるためにも、黙って二人の会話を堂々と聞いてましょ」
「えっ?」
「だって、コソコソ立ち聞きとか悪趣味じゃない。だったら、正々堂々と会話聞いてますって態度で立っていた方がいいでしょう?」
折原さん……。
言い得て妙な理論に何故か納得しつつ、折原さんに習って身体を高橋さんと土屋さんの方におもむろに向けた。
「別に構いませんが、多分、ずっと宴会場で飲んでると思いますから、そちらでご一緒に」
高橋さんは、微笑みながら土屋さんと話している。高橋さんの私服は、チノパンにネイビーのポロシャツだった。今時のカーゴパンツでも、ロールアップパンツでもなかった。靴はローファー。これはスーツを着ていた時と一緒だ。だけど、何着ても似合うな。
「そうですか。それじゃ、それが終わった頃に伺いますね」
ハッ!
それが終わった頃にって……。
「出た。空気読めないスネーク」
エッ……。
「遠回しに部屋に来るなと断ってるのに、何でその応え?」
折原さんが独り言のように呟いたが、その声は意外と大きくて、声の通る折原さんの独り言が土屋さんに聞こえてしまわないかヒヤヒヤしていた。
「いや、部屋に戻ってきたら、きっと酔ってますから直ぐに寝ちゃうと思います」
「でも、せっかくだから、おやすみなさいぐらいは言いに来たいわ」
「スネーク、ハウス!」
「お、折原さん。聞こえますよ」
堪りかねて折原さんの袖を引っ張って、小声で話しかけた。
「ああ。ゴメン、ゴメン。バカらしいから、もう部屋入ろう」
「は、はい」
どうなるんだろう。土屋さんは、本当に高橋さんの部屋に夜中に行くのだろうか。何だか、心がざわざわして仕方がない。
「矢島さん。奥のベッド使って」
「でも……」