新そよ風に乗って 〜時の扉〜

時の扉

11時から、高橋さんと一緒に私も会議に?
「あの……」
「行くぞ」
「えっ? あの、ちょ、ちょっと待って下さい」
「頑張って」
「あっ、はい。行ってきます」
中原さんに挨拶もそこそこに、慌てて机の上に置いてあった手帳とボールペンを1本掴んで、急いで高橋さんの後を追った。
エレベーターを待っている間、緊張してきて視点が一箇所に定まらず、あちらこちらを見渡しながら、エレベーターが来るのを待っている。
「フッ……。大丈夫だ。落ち着け」
「は、はい」
落ち着かない私を見て、高橋さんが微笑みながら声を掛けてくれた。
「矢島さんはレジメを配って、後ろの席で聞いていればいい。勉強になるから」
「はい」
エレベーターに乗ると、先に高橋さんが私を乗せてくれて階数ボタンを押した。
27階……。初めて行く階だ。
というのも、経理のある22階より上には行ったことがない。
前に一度、22階を押すのを忘れて24階まで行ってしまい、降りてすぐまたエレベーターに乗って戻ってきたことはあったが……。
27階でエレベーターのドアが開くと、高橋さんが開のボタンを押して私を先に降ろしてくれた。
「こっちだ」
「は、はい」
< 153 / 210 >

この作品をシェア

pagetop