新そよ風に乗って 〜時の扉〜
何て素敵な言葉なんだろう。自分の気持ちが混乱しているのか、あまりにもハイレベルな会話が続いていたので頭が混乱しているのか、どちらなのかよくわからなかったが、社長の言葉は、重く、重く、心に響いて胸がいっぱいになっていた。
『社員を幸せに出来ない会社は、顧客を満足させられない』
「それに見合う支出をする分には、一向に構わない。利益を得るための道筋を立てるわけだからな」
持ってきた手帳に、大きく星印をして書き込んだ。社長の言葉、ずっと覚えておこう。
書き終えて顔を上げると、高橋さんが一瞬天井を見たのがわかった。
どうしたんだろう?
「LCCの話に戻して悪いのだが、共同経営になった場合、拠点を何処に置いて起業するのかはまだわからないだろうが、具体案、若しくは方向性としてその人件費等について我が社はLCC会社に出向という形をとるのかね?」
会長が、高橋さんに問い掛けていた。
「それにつきましては、開業が二年ないし、三年後ということになるわけですが、在籍している社員を送るより、新たに採用した方が良いと思います」
「ほう。それはまた、何故に?」
高橋さんは、何処まで掘り下げて調べてこの会議に臨んでいるのだろう。聞かれて、応えられないということがないのが凄すぎる。
「採用に関して我が社の幾つかの規定があるかと思いますが、それに加えまして、今後は英語の学力テストで730点以上を取得していることを義務づけては如何でしょうか」
「社全体が外資系でもないのに、何故に、英語力の義務づけをしなければならないんだ。CAやパイロットじゃないんだぞ」
確かに、パイロットやCAは語学力が必要だ。カウンター業務でも、日常的な会話が出来る人が多い。
「英語の学力テストで730点というのは、どのぐらいのレベルなのかね?」
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