新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「鉄は熱いうちに打て。時間は追って連絡する。以上だ」
「それでは、皆さん。お疲れ様でした」
常務の声にも怯むことなく、社長はそのままこの会議を終わりにした。
司会の人の声で、一斉に立ち上がった取締役達は、一様に高橋さんに一瞥をくれて会議室から出て行く。
それを見送るように、高橋さんは書類を片付けていた。
「帰るぞ」
「は、はい」
高橋さんにいきなり振り返られて、焦って立ち上がり高橋さんの後ろに続く。
「高橋君」
「はい」
この声は……。
恐る恐る振り返ると、そこには社長が間近に立っていた。
うわっ。
近くで見ると、また迫力あるかも。
「後で、社長室まで来て貰えるか」
「はい。ご予定は、ございますでしょうか」
「14時半に出かけるが、それまでは居る」
「承知しました。では、伺う前にご連絡させて頂きます」
「そうしてくれ。ん? 新人さんか?」
「はい。会計に仮配属になっております、矢島陽子さんです」
「は、はい。矢島陽子と申します。よ、よろしくお願い致します」
「ハッハッハ……。そんな緊張しなくていい。こちらこそ、よろしく頼みますよ」
エッ……。
社長が右手を差し出して、握手を求められていた。
思わず高橋さんの顔をチラッと見ると、黙って頷いてくれていたので、サッと右手を差し出し社長と握手を交わすと、その手はとても大きくて力強く感じられた。
「それじゃ」
「失礼致します」
「し、失礼致しまふ」
あっ。あまりの緊張に噛んじゃった。
「フッ……。失礼いたしまふって、何だ?」
「す、すみません。緊張しちゃって……その……」
「帰るぞ」
「は、はい」
「それでは、皆さん。お疲れ様でした」
常務の声にも怯むことなく、社長はそのままこの会議を終わりにした。
司会の人の声で、一斉に立ち上がった取締役達は、一様に高橋さんに一瞥をくれて会議室から出て行く。
それを見送るように、高橋さんは書類を片付けていた。
「帰るぞ」
「は、はい」
高橋さんにいきなり振り返られて、焦って立ち上がり高橋さんの後ろに続く。
「高橋君」
「はい」
この声は……。
恐る恐る振り返ると、そこには社長が間近に立っていた。
うわっ。
近くで見ると、また迫力あるかも。
「後で、社長室まで来て貰えるか」
「はい。ご予定は、ございますでしょうか」
「14時半に出かけるが、それまでは居る」
「承知しました。では、伺う前にご連絡させて頂きます」
「そうしてくれ。ん? 新人さんか?」
「はい。会計に仮配属になっております、矢島陽子さんです」
「は、はい。矢島陽子と申します。よ、よろしくお願い致します」
「ハッハッハ……。そんな緊張しなくていい。こちらこそ、よろしく頼みますよ」
エッ……。
社長が右手を差し出して、握手を求められていた。
思わず高橋さんの顔をチラッと見ると、黙って頷いてくれていたので、サッと右手を差し出し社長と握手を交わすと、その手はとても大きくて力強く感じられた。
「それじゃ」
「失礼致します」
「し、失礼致しまふ」
あっ。あまりの緊張に噛んじゃった。
「フッ……。失礼いたしまふって、何だ?」
「す、すみません。緊張しちゃって……その……」
「帰るぞ」
「は、はい」