新そよ風に乗って 〜時の扉〜
おもむろに、白衣を脱ぐジェスチャーを見せた明良さんを見て、思わず笑ってしまった。
「アッハッハ……。明良さん。大丈夫です。そんなことないですよ」
「あっ、そう。それなら良かった」
明良さんって、面白い人だな。医師というネームバリューに囚われない人というか、対等に話しが出来るような雰囲気を作ってくれている。それが私にも、はっきりとわかる。
「高橋さんが、あまりにも……。上手く言えないんですけれど、高橋さんの会社に対するというか、仕事に対する姿勢や考え方が凄く真面目で、いつも会社のことを思って仕事をされていて……。それに比べて、私は全くなっていないし、まして持病があることを隠して入社して……」
「それで、隠していることが辛くなった?」
「はい。辛いというか、後ろめたい自分が居るんです。何でも親身になって、私のことを考えて下さる高橋さんや周りの先輩達のことを考えると……」
中原さんや、折原さんの顔が浮かんだ。
「話せばいいじゃない」
明良さん。
「自分で持病のことを隠しているのが苦しいんだったら、貴博に話したらいいよ」
「でも……」
高橋さんが知ったら、どう思うのだろう。どう、反応するのだろうか。その先のことが想像出来ず、不安だけが募る。
「貴博がこのことを知ったら、どう感じるかが心配なんじゃない?」
明良さんは、私の心の中が見えているみたいだ。レントゲンには写らないはずの、人の心が。
「さっきも話したように、感情は人それぞれだから、貴博がどう感じるかは俺にもわからない。だけど、これだけは言えるよ。俺が知っている限りの貴博は、常にどんなことも冷静に受け止めるし、そこら辺の同年代の男とは器の大きさが違うから」
明良さん……。
「貴博は、持っている男だよ」
「えっ?」
明良さんの言いたいことが、よくわからない。
「あの、高橋さんは、何を持っているんですか? ごめんなさい。よくわからなくて」
「ハハッ……。貴博が、何を持っているか? そうだな。貴博と一緒に居れば、いつの日か、陽子ちゃんもわかる時が来る」
「明良さん?」
いったい、高橋さんは、何を持っているのだろう? さっぱりわからない。しかし、明良さんに悶々としていた思いを話せて、安堵してしまったせいなのか、それとも点滴の成分のせいなのかわからないが、いつの間にか眠ってしまっていた。
点滴が終わったことを告げるアラームの音が、遠くでしている。目を瞑ったまま、反応の鈍い右左脳をゆっくり働かせながら思考を張り巡らせた。そうか、病院で点滴を受けていたんだった。点滴を受けながら、明良さんに……。
覚醒した途端、明良さんが居た場所には、高橋さんの姿があった。
「アッハッハ……。明良さん。大丈夫です。そんなことないですよ」
「あっ、そう。それなら良かった」
明良さんって、面白い人だな。医師というネームバリューに囚われない人というか、対等に話しが出来るような雰囲気を作ってくれている。それが私にも、はっきりとわかる。
「高橋さんが、あまりにも……。上手く言えないんですけれど、高橋さんの会社に対するというか、仕事に対する姿勢や考え方が凄く真面目で、いつも会社のことを思って仕事をされていて……。それに比べて、私は全くなっていないし、まして持病があることを隠して入社して……」
「それで、隠していることが辛くなった?」
「はい。辛いというか、後ろめたい自分が居るんです。何でも親身になって、私のことを考えて下さる高橋さんや周りの先輩達のことを考えると……」
中原さんや、折原さんの顔が浮かんだ。
「話せばいいじゃない」
明良さん。
「自分で持病のことを隠しているのが苦しいんだったら、貴博に話したらいいよ」
「でも……」
高橋さんが知ったら、どう思うのだろう。どう、反応するのだろうか。その先のことが想像出来ず、不安だけが募る。
「貴博がこのことを知ったら、どう感じるかが心配なんじゃない?」
明良さんは、私の心の中が見えているみたいだ。レントゲンには写らないはずの、人の心が。
「さっきも話したように、感情は人それぞれだから、貴博がどう感じるかは俺にもわからない。だけど、これだけは言えるよ。俺が知っている限りの貴博は、常にどんなことも冷静に受け止めるし、そこら辺の同年代の男とは器の大きさが違うから」
明良さん……。
「貴博は、持っている男だよ」
「えっ?」
明良さんの言いたいことが、よくわからない。
「あの、高橋さんは、何を持っているんですか? ごめんなさい。よくわからなくて」
「ハハッ……。貴博が、何を持っているか? そうだな。貴博と一緒に居れば、いつの日か、陽子ちゃんもわかる時が来る」
「明良さん?」
いったい、高橋さんは、何を持っているのだろう? さっぱりわからない。しかし、明良さんに悶々としていた思いを話せて、安堵してしまったせいなのか、それとも点滴の成分のせいなのかわからないが、いつの間にか眠ってしまっていた。
点滴が終わったことを告げるアラームの音が、遠くでしている。目を瞑ったまま、反応の鈍い右左脳をゆっくり働かせながら思考を張り巡らせた。そうか、病院で点滴を受けていたんだった。点滴を受けながら、明良さんに……。
覚醒した途端、明良さんが居た場所には、高橋さんの姿があった。