新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「あの……。すみません。私……」
「気分は、どうだ?」
「はい。もう、大丈夫です」
「矢島さん。点滴終わったので、外しますね」
看護師さんが、カーテンを開けて入って来てアラーム解除のボタンを押すと、腕に刺してあった点滴の針を抜いてくれた。
「まだ、暫く安静にされていて下さいね。武田先生に、連絡しておきますから」
「はい。ありがとうございます」
そう言うと、看護師さんはカーテンを閉めて出て行った。
「それなら良かった」
「本当に、申し訳ありませんでした」
ベッドに寝たままだったが、頭を少しだけ上げて高橋さんに謝った。
「明良から聞いた。俺に、大事な話しがあるそうだが」
「えっ?」
明良さん。まさか……。
「今、良ければ聞くぞ?」
「あの……。今は、その……」
「そうだな。また、落ち着いたらにしよう」
ほんの少しの勇気と、物事に対する情熱があれば、自分の中の問題って解決出来るんじゃないのかな? 明良さんに言われた言葉が思い出された。
ほんの少しの勇気と、物事に対する情熱……。
俺が知っている限りの貴博は、常にどんなことも冷静に受け止めるし、そこら辺の同年代の男とは器の大きさが違うから。
今、話さなかったら、もうずっと言えない気がする。高橋さんに本当の私を知って貰わなければ。狡い私を……。それを知った高橋さんが、どう感じるのかはわからない。軽蔑されるかもしれないし、もしかしたら会社に居られなくなるかもしれない。けれど、話さなかったら、ずっとこの苦しみと負い目からは抜け出すことは出来ないだろう。こんなこと、考えたこともなかった。黙っていればいいと思っていた。黙っていれば済むことだと考えていた。でも、それは違ったんだ。自分に言い聞かせていただけなどと、偽善者ぶったり等しない。社会に出て、社内で初めて尊敬出来る人に出逢った。その人は一番身近に居る人で、自分の上司で……。今も、私の体のことまでもを心配してくれている。それなのに、その人に見せる自分は偽ったまま。いくら、自分に言い聞かせたところで、心が悲鳴をあげている。高橋さんに打ち明けて、その結果、軽蔑されたとしても、同じ心が痛むのならば、本当の自分を高橋さんに話したい。社会人として、自分に責任を持つ意味でも、会社に対しても。
「高橋さん。私、高橋さんに隠していることがあるんです」
「気分は、どうだ?」
「はい。もう、大丈夫です」
「矢島さん。点滴終わったので、外しますね」
看護師さんが、カーテンを開けて入って来てアラーム解除のボタンを押すと、腕に刺してあった点滴の針を抜いてくれた。
「まだ、暫く安静にされていて下さいね。武田先生に、連絡しておきますから」
「はい。ありがとうございます」
そう言うと、看護師さんはカーテンを閉めて出て行った。
「それなら良かった」
「本当に、申し訳ありませんでした」
ベッドに寝たままだったが、頭を少しだけ上げて高橋さんに謝った。
「明良から聞いた。俺に、大事な話しがあるそうだが」
「えっ?」
明良さん。まさか……。
「今、良ければ聞くぞ?」
「あの……。今は、その……」
「そうだな。また、落ち着いたらにしよう」
ほんの少しの勇気と、物事に対する情熱があれば、自分の中の問題って解決出来るんじゃないのかな? 明良さんに言われた言葉が思い出された。
ほんの少しの勇気と、物事に対する情熱……。
俺が知っている限りの貴博は、常にどんなことも冷静に受け止めるし、そこら辺の同年代の男とは器の大きさが違うから。
今、話さなかったら、もうずっと言えない気がする。高橋さんに本当の私を知って貰わなければ。狡い私を……。それを知った高橋さんが、どう感じるのかはわからない。軽蔑されるかもしれないし、もしかしたら会社に居られなくなるかもしれない。けれど、話さなかったら、ずっとこの苦しみと負い目からは抜け出すことは出来ないだろう。こんなこと、考えたこともなかった。黙っていればいいと思っていた。黙っていれば済むことだと考えていた。でも、それは違ったんだ。自分に言い聞かせていただけなどと、偽善者ぶったり等しない。社会に出て、社内で初めて尊敬出来る人に出逢った。その人は一番身近に居る人で、自分の上司で……。今も、私の体のことまでもを心配してくれている。それなのに、その人に見せる自分は偽ったまま。いくら、自分に言い聞かせたところで、心が悲鳴をあげている。高橋さんに打ち明けて、その結果、軽蔑されたとしても、同じ心が痛むのならば、本当の自分を高橋さんに話したい。社会人として、自分に責任を持つ意味でも、会社に対しても。
「高橋さん。私、高橋さんに隠していることがあるんです」