新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「そういうことだ」
そういうことだって、突然、それだけ言われても……。
「あの……」
まだ理解出来ていない私の顔を見た高橋さんが、小さく溜息をついた。
「俺に、これ以上、言わせるな」
「でも、あの……私は、これからどうすれば……」
言いたいことを、上手く言葉に出来ない。
「いいか?」
そんな私を見かねたのか、そう言い掛けた高橋さんが、頬に掛かっていた私の髪を左手でかき分けてくれながら、ずれてしまった毛布を直してくれた。その一連の動作に、動揺しながらも、何故か安心して任せている自分が居た。
「さっきも言ったが、他意はない。俺自身も、お前をそういう目で見てもいない。人間のデリケートな部分でもあるが、お前に持病があるからといって、それは決して悪いことではない。生身の人間なんだ。誰だって、具合の悪い時もあるし、それが軽かったり、重かったりすることだってある。完治するまでに時間を要することもあるし、それが完治せずに、病と上手く向き合っていかなければならない場合だってある。だから、お前はそれを負い目に感じることはない。人それぞれの人生に、他人が介して良い場合と、そうでない場合がある。しかし、俺はお前の上司という立場から言わせて貰えば、入社してまだ日は浅いが、お前の就業態度は別段、何も勤務に支障をきたしていない。それと、入社前の健康診断でもパスしていたわけだから、問題ないだろう?」
「高橋さん……」
複雑な思いが交錯する。持病を隠して入社してしまったこと。それを告白して、許して貰おうとしていた自分。そんな自分の甘えを見透かされたかのような、高橋さんの言葉の数々。
「ただ、これだけは言っておく。病に甘んじてはいけないし、病を盾にはするな。結果、お前のためにならないから。それと、今後、会社で毎年ある健康診断では、必ず問診票に持病のことは書け。正直にな。そうすれば、会社として把握できると共に、何かあった時にも安心だ。いいな?」
「はい……。高橋さん。申し訳ありませんでした」
そういうことだって、突然、それだけ言われても……。
「あの……」
まだ理解出来ていない私の顔を見た高橋さんが、小さく溜息をついた。
「俺に、これ以上、言わせるな」
「でも、あの……私は、これからどうすれば……」
言いたいことを、上手く言葉に出来ない。
「いいか?」
そんな私を見かねたのか、そう言い掛けた高橋さんが、頬に掛かっていた私の髪を左手でかき分けてくれながら、ずれてしまった毛布を直してくれた。その一連の動作に、動揺しながらも、何故か安心して任せている自分が居た。
「さっきも言ったが、他意はない。俺自身も、お前をそういう目で見てもいない。人間のデリケートな部分でもあるが、お前に持病があるからといって、それは決して悪いことではない。生身の人間なんだ。誰だって、具合の悪い時もあるし、それが軽かったり、重かったりすることだってある。完治するまでに時間を要することもあるし、それが完治せずに、病と上手く向き合っていかなければならない場合だってある。だから、お前はそれを負い目に感じることはない。人それぞれの人生に、他人が介して良い場合と、そうでない場合がある。しかし、俺はお前の上司という立場から言わせて貰えば、入社してまだ日は浅いが、お前の就業態度は別段、何も勤務に支障をきたしていない。それと、入社前の健康診断でもパスしていたわけだから、問題ないだろう?」
「高橋さん……」
複雑な思いが交錯する。持病を隠して入社してしまったこと。それを告白して、許して貰おうとしていた自分。そんな自分の甘えを見透かされたかのような、高橋さんの言葉の数々。
「ただ、これだけは言っておく。病に甘んじてはいけないし、病を盾にはするな。結果、お前のためにならないから。それと、今後、会社で毎年ある健康診断では、必ず問診票に持病のことは書け。正直にな。そうすれば、会社として把握できると共に、何かあった時にも安心だ。いいな?」
「はい……。高橋さん。申し訳ありませんでした」