新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「謝ることはない。これからは、具合の悪い時は無理せずに休め。辛かったら、もっと早めに言ってくれ。それだけだ」
「高橋……さん」
堪えようとしても、涙があふれてきて止めようがない。
「泣くな。俺が泣かしたみたいだろう?」
「すみません」
涙を拭おうとしたが、咄嗟に出した左手の人差し指にはパルスオキシメーターを装着しているため、上手く拭えない。
すると、高橋さんが、ポケットからハンカチを出して涙を拭ってくれた。
「ごめんなさい。あっ、申し訳ありません」
つい、謝る言葉をホッとして気が緩んだせいか間違えてしまい、慌てて言い直した。
「フッ……」
そんな私の言動が可笑しかったのか、高橋さんは静かに笑っている。
「貴博。陽子ちゃん、泣かしたの?」
明良さん。
タイミングが良いというか、悪いというのか、明良さんがカーテンを少し開けて、顔だけ覗かせた。
「明良。人聞きの悪いことを言うな」
「あれ? 違った? 俺は、またてっきり……」
「お前のいつもの勘違いだ。明良」
「陽子ちゃん。どうかな? ちょっと、胸の音聞かせてくれる?」
すると、高橋さんの姿がスッと視界から消え、明良さんが少し開いていたカーテンを閉めた。
「大きく深呼吸してみて」
「はい」
明良さんの指示に従って、大きく深呼吸を何回かすると、頷きながら明良さんが聴診器を外して首から掛けた。
「呼吸の数値も98まで戻って来たし、点滴も終わったから、後30分ぐらい休んで何ともなかったら、もう帰っても大丈夫だから」
「ありがとうございます」
「良かったね」
「はい。お陰様で、呼吸も楽になりました。ありがとうございます」
「ハハッ……。そうじゃないよ」
「えっ?」
「まあ、それもそうだけど、貴博に話せたんでしょう? これで、すっきりしたんじゃない?」
「明良さん……」
「高橋……さん」
堪えようとしても、涙があふれてきて止めようがない。
「泣くな。俺が泣かしたみたいだろう?」
「すみません」
涙を拭おうとしたが、咄嗟に出した左手の人差し指にはパルスオキシメーターを装着しているため、上手く拭えない。
すると、高橋さんが、ポケットからハンカチを出して涙を拭ってくれた。
「ごめんなさい。あっ、申し訳ありません」
つい、謝る言葉をホッとして気が緩んだせいか間違えてしまい、慌てて言い直した。
「フッ……」
そんな私の言動が可笑しかったのか、高橋さんは静かに笑っている。
「貴博。陽子ちゃん、泣かしたの?」
明良さん。
タイミングが良いというか、悪いというのか、明良さんがカーテンを少し開けて、顔だけ覗かせた。
「明良。人聞きの悪いことを言うな」
「あれ? 違った? 俺は、またてっきり……」
「お前のいつもの勘違いだ。明良」
「陽子ちゃん。どうかな? ちょっと、胸の音聞かせてくれる?」
すると、高橋さんの姿がスッと視界から消え、明良さんが少し開いていたカーテンを閉めた。
「大きく深呼吸してみて」
「はい」
明良さんの指示に従って、大きく深呼吸を何回かすると、頷きながら明良さんが聴診器を外して首から掛けた。
「呼吸の数値も98まで戻って来たし、点滴も終わったから、後30分ぐらい休んで何ともなかったら、もう帰っても大丈夫だから」
「ありがとうございます」
「良かったね」
「はい。お陰様で、呼吸も楽になりました。ありがとうございます」
「ハハッ……。そうじゃないよ」
「えっ?」
「まあ、それもそうだけど、貴博に話せたんでしょう? これで、すっきりしたんじゃない?」
「明良さん……」