新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「黒沢さん。何か矢島さんにご用でした?急ぎじゃなければ、休憩時間が終わりそうなので、先によろしいでしょうか?」
「別にいいわよ」
凄いな。黒沢さんに有無を言わせないほど、間髪入れずに言葉が次から次へと出てくる。
「ありがとうございます」
黒沢さんに挨拶をすると、まるで滑るような動作で私の前にその人は座り、何か言いたげだった黒沢さんは、そのまま立ち去っていった。
「ふう。間一髪」
「えっ?」
「私、主計の折原敦子。高橋の同期よ。よろしく」
折原さんは、高橋さんと同期なんだ。
「よ、よろしくお願いします」
ということは、黒沢さんより下……。それなのに、先輩の前でも物怖じしないで堂々としていた。自分に自信があるからだろうか。
「大丈夫だ。誰かが何か言ったとしても、それは聞き流せ。心に余裕のない言いたい奴には言わせておけばいい」と、高橋さんはそう言ったけれど、現実はどうしても真に受けてしまう。そんな自分が嫌いで……。
「先は長いんだし、あれこれ悩まない方がいいわよ」
「はい……」
「矢島さん。待たせちゃってごめんね。あれ?折原さんと知り合いだった?」
「あっ、いえ……」
中原さんは、このシチュエーションを見てそう感じたのかもしれない。
「この時期、お局達は盛りが付いているんだから、もっと目を光らせておかないと駄目だよ、中原」
「盛りって……」
「暇なお局たちは、新たな今年のターゲットを決めようと物色中なのよ。盛りと一緒でしょ?」
「……」
中原さんも絶句している。勿論、私もだけど……。
「もっと他のことに労力使えば良いものを、くだらない人の揚げ足取りばかりやって優越感に浸るしかない、姑息で小さな人間。それがお局所以の証とも言うんだけどさ。だから、もっと中原がしっかり矢島さんをブロックしてあげないとね」
「はぁ……」
「矢島さん。何かあったら、遠慮なく言って」
「はい」
「それじゃ」
「どうも」
折原さんは、それだけ言うと席を立って行ってしまった。私の前に座ったのは、何か用事があったからじゃなかったの? 立ち去っていった折原さんの後ろ姿を目で追った後、中原さんと顔を見合わせながら、何とも言えない空気がその場を包んでいる。
「別にいいわよ」
凄いな。黒沢さんに有無を言わせないほど、間髪入れずに言葉が次から次へと出てくる。
「ありがとうございます」
黒沢さんに挨拶をすると、まるで滑るような動作で私の前にその人は座り、何か言いたげだった黒沢さんは、そのまま立ち去っていった。
「ふう。間一髪」
「えっ?」
「私、主計の折原敦子。高橋の同期よ。よろしく」
折原さんは、高橋さんと同期なんだ。
「よ、よろしくお願いします」
ということは、黒沢さんより下……。それなのに、先輩の前でも物怖じしないで堂々としていた。自分に自信があるからだろうか。
「大丈夫だ。誰かが何か言ったとしても、それは聞き流せ。心に余裕のない言いたい奴には言わせておけばいい」と、高橋さんはそう言ったけれど、現実はどうしても真に受けてしまう。そんな自分が嫌いで……。
「先は長いんだし、あれこれ悩まない方がいいわよ」
「はい……」
「矢島さん。待たせちゃってごめんね。あれ?折原さんと知り合いだった?」
「あっ、いえ……」
中原さんは、このシチュエーションを見てそう感じたのかもしれない。
「この時期、お局達は盛りが付いているんだから、もっと目を光らせておかないと駄目だよ、中原」
「盛りって……」
「暇なお局たちは、新たな今年のターゲットを決めようと物色中なのよ。盛りと一緒でしょ?」
「……」
中原さんも絶句している。勿論、私もだけど……。
「もっと他のことに労力使えば良いものを、くだらない人の揚げ足取りばかりやって優越感に浸るしかない、姑息で小さな人間。それがお局所以の証とも言うんだけどさ。だから、もっと中原がしっかり矢島さんをブロックしてあげないとね」
「はぁ……」
「矢島さん。何かあったら、遠慮なく言って」
「はい」
「それじゃ」
「どうも」
折原さんは、それだけ言うと席を立って行ってしまった。私の前に座ったのは、何か用事があったからじゃなかったの? 立ち去っていった折原さんの後ろ姿を目で追った後、中原さんと顔を見合わせながら、何とも言えない空気がその場を包んでいる。