新そよ風に乗って 〜時の扉〜
涙が頬を伝っていた。何で、泣いているのか。何故、涙が溢れてしまうのか。自分でもよくわからないが、涙が止まらない。
「泣くな。俺が泣かしたみたいだろう?」
そんな風に言われたら、余計に泣けてくる。
あっ……。
頬を伝っていた涙を、高橋さんが左手の親指で拭ってくれていた。
一瞬、驚いて息も出来ず、目を閉じたまま微動だに出来ずにいる。
心臓がドキドキして、口から飛び出てしまいそう。そっと目を開けると、目の前に高橋さんの顔があった。
ち、近過ぎですって、高橋さん。
「ちっこい鼻だな……」
ハッ?
「ちっこいって、な、何、言ってるんですか」
「ほら、涙拭いておけ」
そう言って、高橋さんがポケットからハンカチを出して、膝の上に置いてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「それじゃ、行くぞ。腹減りヘリハラだ」
はい?
何で、高橋さんは格好いいのに、たまにお茶目なことを言うんだろう。それがまた魅力だったりもするんだけれど……。あれ? 私……。何だろう? このキュッと締め付けられるような感覚は。
「降りて」
「ありがとうございます」
駐車場に車を駐めて、助手席のドアを開けてくれた高橋さんにお礼を言って車を降りると、そこは都会なのに、閑静な住宅街の一角にあるような、そんな此処だけ隔離されたような静かな場所だった。
「いらっしゃいませ」
「高橋ですが」
「お待ちしておりました」
お待ちしておりましたって?
「どうぞ、こちらでございます」
店員さんに通された部屋は個室のようで、ドアを開けた途端、中から声が聞こえてきた。
「……ちゃんブリブリ!」
だ、誰?
「遅いぞ。今、不機嫌この上、極まりないから俺。まあ、空腹感がないよりは、ま……」
「悪いな。矢島さん。入って」
「えっ? あっ、はい」
「泣くな。俺が泣かしたみたいだろう?」
そんな風に言われたら、余計に泣けてくる。
あっ……。
頬を伝っていた涙を、高橋さんが左手の親指で拭ってくれていた。
一瞬、驚いて息も出来ず、目を閉じたまま微動だに出来ずにいる。
心臓がドキドキして、口から飛び出てしまいそう。そっと目を開けると、目の前に高橋さんの顔があった。
ち、近過ぎですって、高橋さん。
「ちっこい鼻だな……」
ハッ?
「ちっこいって、な、何、言ってるんですか」
「ほら、涙拭いておけ」
そう言って、高橋さんがポケットからハンカチを出して、膝の上に置いてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「それじゃ、行くぞ。腹減りヘリハラだ」
はい?
何で、高橋さんは格好いいのに、たまにお茶目なことを言うんだろう。それがまた魅力だったりもするんだけれど……。あれ? 私……。何だろう? このキュッと締め付けられるような感覚は。
「降りて」
「ありがとうございます」
駐車場に車を駐めて、助手席のドアを開けてくれた高橋さんにお礼を言って車を降りると、そこは都会なのに、閑静な住宅街の一角にあるような、そんな此処だけ隔離されたような静かな場所だった。
「いらっしゃいませ」
「高橋ですが」
「お待ちしておりました」
お待ちしておりましたって?
「どうぞ、こちらでございます」
店員さんに通された部屋は個室のようで、ドアを開けた途端、中から声が聞こえてきた。
「……ちゃんブリブリ!」
だ、誰?
「遅いぞ。今、不機嫌この上、極まりないから俺。まあ、空腹感がないよりは、ま……」
「悪いな。矢島さん。入って」
「えっ? あっ、はい」