新そよ風に乗って 〜時の扉〜
誰かが話の途中だったのに、高橋さんが振り返って、私を部屋の中に入れようと誘った。
「あれ? 陽子ちゃんも一緒だったんだ」
「明良さん」
その声の主は、明良さんだった。
「何? 今日は、訪問の日か」
「ああ。矢島さん。座って」
「あっ、はい」
高橋さんの右隣に座ると、店員さんが椅子を併せてくれた。
「すみません。ありがとうございます」
慣れない感じで恐縮しながら座ると、高橋さんの前に座っていた明良さんが、何故か私の前に座り直したので、明良さんの顔を見ると、首を左に傾げながら微笑んでくれた。
「目の前が野郎じゃ、せっかくの料理も美味しくないでしょう?」
明良さん……。
「野郎で、悪かったな。明良。そのせっかくの料理も美味しくなくなるぐらいの俺の運転じゃ、車も酔うだろうから、お前、歩いて帰るんだな」
「ちょ、ちょっと、高橋君? それはないんじゃない? こんなに待たせておいてさ」
「それは、それ。これは、これだ。さて、何にするかな……」
「貴博ちゃん。そう言わずに……。これはギャグじゃないよ。陽子ちゃん」
プッ!
高橋さんの機嫌を損ねたことに気づき、明良さんが慌ててフォローしようとしているが、そんなことはお構いなしに高橋さんは、メニューを見ていた。
「矢島さん。苦手なものとか、ある?」
「私ですか?」
「俺、ノンアルコールが苦手。アルコールでないと……」
「明良。お前には、聞いてない」
「はい……すいません」
「特にないですが、強いて言えば、お酒が苦手です」
「ハッ?」
何だか、明良さんに喧嘩を売っているような感じになってしまったが、そうなんだ。お酒が苦手だったりする。ビールをほんの少しだけ飲んだだけでも真っ赤になってしまい、それ以上飲むと、すぐ酔って眠くなってしまう。
「そう。それじゃ、適当にオーダーして、みんなでシェアしようか」
「はい。お任せします」
「はい。貴博ちゃんに、お任せします」
明良さんったら……。
そんな明良さんをチラッと見た高橋さんだったが、そのまま店員さんを呼んでオーダーしていた。
何だか、夢のようだな。仕事の一環で、前に空港に外出した時、偶然、明良さんに遭遇して一緒にランチをしたことはあったが、休日に高橋さんと明良さんとランチが出来るなんて想像すらしたことなかった。
「陽子ちゃん。仕事には、もう慣れた?」
美味しい料理に感激しながら食べていると、明良さんがそんなことを問い掛けてきた。
「いいえ。それが……」
午前中の出来事が脳裏を掠めながらも、会社での自分の不甲斐なさが思い出されて言葉に詰まってしまった。
「それが?」
「あれ? 陽子ちゃんも一緒だったんだ」
「明良さん」
その声の主は、明良さんだった。
「何? 今日は、訪問の日か」
「ああ。矢島さん。座って」
「あっ、はい」
高橋さんの右隣に座ると、店員さんが椅子を併せてくれた。
「すみません。ありがとうございます」
慣れない感じで恐縮しながら座ると、高橋さんの前に座っていた明良さんが、何故か私の前に座り直したので、明良さんの顔を見ると、首を左に傾げながら微笑んでくれた。
「目の前が野郎じゃ、せっかくの料理も美味しくないでしょう?」
明良さん……。
「野郎で、悪かったな。明良。そのせっかくの料理も美味しくなくなるぐらいの俺の運転じゃ、車も酔うだろうから、お前、歩いて帰るんだな」
「ちょ、ちょっと、高橋君? それはないんじゃない? こんなに待たせておいてさ」
「それは、それ。これは、これだ。さて、何にするかな……」
「貴博ちゃん。そう言わずに……。これはギャグじゃないよ。陽子ちゃん」
プッ!
高橋さんの機嫌を損ねたことに気づき、明良さんが慌ててフォローしようとしているが、そんなことはお構いなしに高橋さんは、メニューを見ていた。
「矢島さん。苦手なものとか、ある?」
「私ですか?」
「俺、ノンアルコールが苦手。アルコールでないと……」
「明良。お前には、聞いてない」
「はい……すいません」
「特にないですが、強いて言えば、お酒が苦手です」
「ハッ?」
何だか、明良さんに喧嘩を売っているような感じになってしまったが、そうなんだ。お酒が苦手だったりする。ビールをほんの少しだけ飲んだだけでも真っ赤になってしまい、それ以上飲むと、すぐ酔って眠くなってしまう。
「そう。それじゃ、適当にオーダーして、みんなでシェアしようか」
「はい。お任せします」
「はい。貴博ちゃんに、お任せします」
明良さんったら……。
そんな明良さんをチラッと見た高橋さんだったが、そのまま店員さんを呼んでオーダーしていた。
何だか、夢のようだな。仕事の一環で、前に空港に外出した時、偶然、明良さんに遭遇して一緒にランチをしたことはあったが、休日に高橋さんと明良さんとランチが出来るなんて想像すらしたことなかった。
「陽子ちゃん。仕事には、もう慣れた?」
美味しい料理に感激しながら食べていると、明良さんがそんなことを問い掛けてきた。
「いいえ。それが……」
午前中の出来事が脳裏を掠めながらも、会社での自分の不甲斐なさが思い出されて言葉に詰まってしまった。
「それが?」