新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「そんなむせるようなこと、聞いてないんだけどなあ」
神田さんが心配そうに、私の顔を覗き込んでいる。
「ごめんなさい。もう大丈夫です」
「良かった。ビックリしたわよ。急にむせちゃうんだもの」
「コーヒーが、変なところに入っちゃって……」
「もしかして、矢島さん。高橋さんのことが好きなの?」
ハッ?
「な、何、言ってるんですか! そんなわけないじゃないですか。上司ですよ。単なる上司ですって」
「そうなの? 私の勘、かなりの確率で当たるのよ?」
「神田さん! からかうのは、やめて下さい」
「アッハッハ……。ごめんね。でも、そうムキになればなるほど、怪しいと思われちゃうから、気をつけた方がいいわよ。ミスター・ハイブリッジは、かなりモテるから」
ミスター・ハイブリッジ?
「これから高橋さんのことは、ハイブリッジって呼ぶから」
「えっ? な、何でですか?」
「アンタも鈍い子だね。社内は勿論、ここら辺でまともに高橋とか名前出したら、一斉に刺すような視線か、メラメラビームでやられちゃうわよ?」
メラメラビームって……。
「オッホン! あまりご存じないようだから、敢えてご説明させて頂きますけどね?」
わざとらしく咳払いをして神田さんが、手招きをしながら私にもっと近づくように手招きをすると、テーブルに両肘を突きながら身を乗り出してきた。
「高橋貴博は、我が社において1、2を争うSPI。そのSPIの部下として一緒に働いてるアンタは、もう全女性社員の敵といっても過言じゃないわ。うん」
自分で言いながら、自身も納得するかのように自問自答の相づちを打つと、真剣な眼差しでこちらを見た。
「矢島さんは……。ああ、さん付けは面倒だ。陽子でいい?」
「は、はい」
「陽子は、ハイブリッジのこと、どう思ってるの?」
高橋さんのことをどう思ってるなどと、唐突に聞かれて返答に困ってしまう。
「どうって……。高橋さんは上司だし、先輩だし」
「上司だし、先輩だしとか、そんな優等生は応えは望んでないのよ」
神田さん?
「私さあ、見えちゃったりするんだよね」
「見えちゃったりする? な、何をですか? ま、まさか、お化けとかじゃないですよね? お化けの話だったらやめて下さい。私、もの凄く苦手なので」
「アッハッハ……。そんなんじゃないわよ。私が時々、見えたりするのは人の心」
そう言うと、神田さんは近づいていた私の左胸を人差し指で押した。
心?
「心……ですか?」
「そう。陽子は、ハイブリッジのことが好きでしょ?」
「えっ? な、何を急に。へ、変なこと言い出さないで下さい。わ、私は、私は高橋さんのことをそんな風に思ったこととか、まだないですよ」
「まだ?」
神田さんが心配そうに、私の顔を覗き込んでいる。
「ごめんなさい。もう大丈夫です」
「良かった。ビックリしたわよ。急にむせちゃうんだもの」
「コーヒーが、変なところに入っちゃって……」
「もしかして、矢島さん。高橋さんのことが好きなの?」
ハッ?
「な、何、言ってるんですか! そんなわけないじゃないですか。上司ですよ。単なる上司ですって」
「そうなの? 私の勘、かなりの確率で当たるのよ?」
「神田さん! からかうのは、やめて下さい」
「アッハッハ……。ごめんね。でも、そうムキになればなるほど、怪しいと思われちゃうから、気をつけた方がいいわよ。ミスター・ハイブリッジは、かなりモテるから」
ミスター・ハイブリッジ?
「これから高橋さんのことは、ハイブリッジって呼ぶから」
「えっ? な、何でですか?」
「アンタも鈍い子だね。社内は勿論、ここら辺でまともに高橋とか名前出したら、一斉に刺すような視線か、メラメラビームでやられちゃうわよ?」
メラメラビームって……。
「オッホン! あまりご存じないようだから、敢えてご説明させて頂きますけどね?」
わざとらしく咳払いをして神田さんが、手招きをしながら私にもっと近づくように手招きをすると、テーブルに両肘を突きながら身を乗り出してきた。
「高橋貴博は、我が社において1、2を争うSPI。そのSPIの部下として一緒に働いてるアンタは、もう全女性社員の敵といっても過言じゃないわ。うん」
自分で言いながら、自身も納得するかのように自問自答の相づちを打つと、真剣な眼差しでこちらを見た。
「矢島さんは……。ああ、さん付けは面倒だ。陽子でいい?」
「は、はい」
「陽子は、ハイブリッジのこと、どう思ってるの?」
高橋さんのことをどう思ってるなどと、唐突に聞かれて返答に困ってしまう。
「どうって……。高橋さんは上司だし、先輩だし」
「上司だし、先輩だしとか、そんな優等生は応えは望んでないのよ」
神田さん?
「私さあ、見えちゃったりするんだよね」
「見えちゃったりする? な、何をですか? ま、まさか、お化けとかじゃないですよね? お化けの話だったらやめて下さい。私、もの凄く苦手なので」
「アッハッハ……。そんなんじゃないわよ。私が時々、見えたりするのは人の心」
そう言うと、神田さんは近づいていた私の左胸を人差し指で押した。
心?
「心……ですか?」
「そう。陽子は、ハイブリッジのことが好きでしょ?」
「えっ? な、何を急に。へ、変なこと言い出さないで下さい。わ、私は、私は高橋さんのことをそんな風に思ったこととか、まだないですよ」
「まだ?」