新そよ風に乗って 〜時の扉〜
「何処にいても、会社のために尽力することには違いないだろう?」
「そうですが、でも……」
「でも、何だ?」
「高橋さんは、そうやって築いてきたものが沢山あって、勿論、努力されて、人一倍勉強もされて公認会計士になられたと思います。ですが、私みたいに社会に出て間もないとはいえ、何もない人間にとっては目先のことの方が気になって仕方がないんです」
「……」
「まだ、そこまで考えが及ばないというか、その……呆れられるかもしれませんが、今の私には本配属先が何処になるのかが、気掛かりでなりません。ごめんなさい……高橋さん」
何故だろう。泣くような場面でもないのに、涙が溢れて高橋さんの顔がよく見えない。
「また泣く」
「すみません……」
「昼間、泣き足らなかったか?」
そう言うと、高橋さんがテーブル越しに、またハンカチを差し出してくれた。昼間とは違うハンカチを……。
「それとも、またハンカチが欲しいのかあ?」
エッ……。
差し出されたハンカチを受け取ると、昼間とは違って、テーブルに伏せるようにして高橋さんが私の顔を覗き込んだ。
「ハンカチフェチの陽子ちゃーん」
ハッ?
「ちょ、ちょっと高橋さん。私、そんなんじゃありません。ハンカチフェチだなんて」
「ふーん……」
見ると、高橋さんがテーブルの上に両肘をついて、両手を組んで顎をのせながら私の顔をジッと見ている。
そ、そんなに、マジマジと見ないで欲しい。ドキドキしちゃうじゃない。まして、高橋さんがそんなポーズしてるなんて。
「な、何ですか? そんなに、ジッと見ないで下さい」
「ん? ちっこくて、オマケみたいな鼻だと思ってさ」
オ、オマケって……。
「高橋さん!」
「はい」
いきなり、そんないい返事をされても困るじゃない。
「あの……。私、ハンカチフェチでもないですし、オマケの鼻でもないですから」
「そうなんだ。そりゃ、良かった」
「良くないです」
何となく、後に引けなくなって言い合いになってしまっている。でも、感じていた。高橋さんの彼女は、きっと幸せだろうなと。昨日のあの女性が、彼女なんだろうか。
「俺、駄目なんだ」
エッ……。
「目の前で泣かれると、どうしていいか、わからなくなる……」
高橋さん?
「そうですが、でも……」
「でも、何だ?」
「高橋さんは、そうやって築いてきたものが沢山あって、勿論、努力されて、人一倍勉強もされて公認会計士になられたと思います。ですが、私みたいに社会に出て間もないとはいえ、何もない人間にとっては目先のことの方が気になって仕方がないんです」
「……」
「まだ、そこまで考えが及ばないというか、その……呆れられるかもしれませんが、今の私には本配属先が何処になるのかが、気掛かりでなりません。ごめんなさい……高橋さん」
何故だろう。泣くような場面でもないのに、涙が溢れて高橋さんの顔がよく見えない。
「また泣く」
「すみません……」
「昼間、泣き足らなかったか?」
そう言うと、高橋さんがテーブル越しに、またハンカチを差し出してくれた。昼間とは違うハンカチを……。
「それとも、またハンカチが欲しいのかあ?」
エッ……。
差し出されたハンカチを受け取ると、昼間とは違って、テーブルに伏せるようにして高橋さんが私の顔を覗き込んだ。
「ハンカチフェチの陽子ちゃーん」
ハッ?
「ちょ、ちょっと高橋さん。私、そんなんじゃありません。ハンカチフェチだなんて」
「ふーん……」
見ると、高橋さんがテーブルの上に両肘をついて、両手を組んで顎をのせながら私の顔をジッと見ている。
そ、そんなに、マジマジと見ないで欲しい。ドキドキしちゃうじゃない。まして、高橋さんがそんなポーズしてるなんて。
「な、何ですか? そんなに、ジッと見ないで下さい」
「ん? ちっこくて、オマケみたいな鼻だと思ってさ」
オ、オマケって……。
「高橋さん!」
「はい」
いきなり、そんないい返事をされても困るじゃない。
「あの……。私、ハンカチフェチでもないですし、オマケの鼻でもないですから」
「そうなんだ。そりゃ、良かった」
「良くないです」
何となく、後に引けなくなって言い合いになってしまっている。でも、感じていた。高橋さんの彼女は、きっと幸せだろうなと。昨日のあの女性が、彼女なんだろうか。
「俺、駄目なんだ」
エッ……。
「目の前で泣かれると、どうしていいか、わからなくなる……」
高橋さん?