新そよ風に乗って 〜時の扉〜
そうだ!
「本当? それなら良かった。あれ? 陽子ちゃん。何処行くの?」
椅子から立ち上がった私を、座ったまま明良さんが見上げた。
「あの、やっぱりレシピ忘れてしまいそうなので、携帯にメモしようと思って」
明良さんと話ながら、隣に座っていた高橋さんが立ち上がった気配がした。
「メモしなくても大丈夫だよ。『さしすせそ』で入れていけば……」
「これでいいだろ?」
エッ……。
高橋さんが、白い何かをテーブルの上に置いた。
「あっ、これ」
見ると、メモ用紙に明良さんが教えてくれたナスとピーマンの調味料と、お豆腐とたらこの調味料が書いてあった。
「ああ、ごま油もか」
そう言って、高橋さんが左手でメモ用紙に書き足してくれている。
「す、すみません。ありがとうございます」
「なんだよ、貴博。食べてばっかりで聞いてないのかと思ったら、聞いてないようでちゃんと聞いてるんじゃん」
「あまりにもワンワンうるさいから、聞きたくなくても耳に付いた」
あれ?
高橋さんが置いてくれたメモを見ていたら、分量はもちろん全て同じなので省かれていたが、右下に何か小さく書いてあった。何だろう?
顔を近づけてよく見てみると、犬の絵が書いてあり、その胴体に文字が記されていて……。
嘘……。
「プッ!」
思わず吹き出してしまい、慌てて口を押さえた。
まさか、高橋さん? 高橋さんがこれを書いたの? でも高橋さん以外、書く人はいない。
「陽子ちゃん。いきなり吹き出したりして、何が可笑しいの? そのメモ見せて」
うわっ。まずい。明良さんに、気づかれてしまった。
「あっ……」
テーブルを挟んで私の前に座っていた明良さんが、手を伸ばして高橋さんが書いてくれたメモを取ろうとしたが、間一髪のところで高橋さんがスッと横から左手で取り、二つ折りにしながら私に手渡してくれた。
「早くしまっておけ。忘れるぞ」
「は、はい」
「何なんだよ。見せてくれたっていいんじゃなあい? そこの二人、良くないぞ。結託して俺を謀るつもりか?」
「……」
明良さんが高橋さんに文句を言っている隙に、ポケットにメモをしまった。
あとで帰ったら、ゆっくり見てみよう。高橋さんが書いた犬の絵。その胴体には、明良犬と書かれていて、吹き出しにワン、ワン、ワンと書いてあった。
高橋さんは、こんなお茶目な一面も持っているんだ。会社では絶対知ることが出来ないだろう、新たな発見が出来て嬉しかった。
「これ、New?」
「ああ、先週だったかな」
「会社の購買ブーでゲット? また俺にもお願い。HDに落としたいから、出来ればCD貸して貰えると有り難いんだけど」
すると、高橋さんが食べながら無言で右手を明良さんに差し出した。
「本当? それなら良かった。あれ? 陽子ちゃん。何処行くの?」
椅子から立ち上がった私を、座ったまま明良さんが見上げた。
「あの、やっぱりレシピ忘れてしまいそうなので、携帯にメモしようと思って」
明良さんと話ながら、隣に座っていた高橋さんが立ち上がった気配がした。
「メモしなくても大丈夫だよ。『さしすせそ』で入れていけば……」
「これでいいだろ?」
エッ……。
高橋さんが、白い何かをテーブルの上に置いた。
「あっ、これ」
見ると、メモ用紙に明良さんが教えてくれたナスとピーマンの調味料と、お豆腐とたらこの調味料が書いてあった。
「ああ、ごま油もか」
そう言って、高橋さんが左手でメモ用紙に書き足してくれている。
「す、すみません。ありがとうございます」
「なんだよ、貴博。食べてばっかりで聞いてないのかと思ったら、聞いてないようでちゃんと聞いてるんじゃん」
「あまりにもワンワンうるさいから、聞きたくなくても耳に付いた」
あれ?
高橋さんが置いてくれたメモを見ていたら、分量はもちろん全て同じなので省かれていたが、右下に何か小さく書いてあった。何だろう?
顔を近づけてよく見てみると、犬の絵が書いてあり、その胴体に文字が記されていて……。
嘘……。
「プッ!」
思わず吹き出してしまい、慌てて口を押さえた。
まさか、高橋さん? 高橋さんがこれを書いたの? でも高橋さん以外、書く人はいない。
「陽子ちゃん。いきなり吹き出したりして、何が可笑しいの? そのメモ見せて」
うわっ。まずい。明良さんに、気づかれてしまった。
「あっ……」
テーブルを挟んで私の前に座っていた明良さんが、手を伸ばして高橋さんが書いてくれたメモを取ろうとしたが、間一髪のところで高橋さんがスッと横から左手で取り、二つ折りにしながら私に手渡してくれた。
「早くしまっておけ。忘れるぞ」
「は、はい」
「何なんだよ。見せてくれたっていいんじゃなあい? そこの二人、良くないぞ。結託して俺を謀るつもりか?」
「……」
明良さんが高橋さんに文句を言っている隙に、ポケットにメモをしまった。
あとで帰ったら、ゆっくり見てみよう。高橋さんが書いた犬の絵。その胴体には、明良犬と書かれていて、吹き出しにワン、ワン、ワンと書いてあった。
高橋さんは、こんなお茶目な一面も持っているんだ。会社では絶対知ることが出来ないだろう、新たな発見が出来て嬉しかった。
「これ、New?」
「ああ、先週だったかな」
「会社の購買ブーでゲット? また俺にもお願い。HDに落としたいから、出来ればCD貸して貰えると有り難いんだけど」
すると、高橋さんが食べながら無言で右手を明良さんに差し出した。