たとえそれが、どんな結末だったとしても
「朝倉、放課後少し職員室に来い」
長い授業が終わり、HR前。突然担任の先生に呼び止められて、え、と声が漏れそうになった。
前にも似たようなことがあった。中学三年の頃、学校で行った学力試験の結果が少しだけ悪かった時。
その時はお母さんが学校に電話をかけ、三者面談の機会を設けていたのだ。先生と母親が、私を置いて話し続けるあの時間。
「私がちゃんと見てあげられなかったから」
そうこちらを一瞥する母に、何も言葉が出てこなかった。
手足の先から体温が奪われていく感覚。
先生はそんな私の様子に気付いていないのか、「よろしくな」と言って背を向けた。
心臓の音が大きく、速くなっていく。
今度は一体何を言われるのだろうか。
もしかしたら、母は泣いてしまうかもしれない。
どうしてこんな子に、と涙を流す母とそんな母の前で困惑する担任を想像すると恐ろしい気分になった。
細かく手が震え始める。喉の奥が締め付けられて、目頭が熱くなっていく。
自分でも、どうしてこんなに怯えているのかわからなかった。
どうせすぐ終わるのに。次のテストで頑張れば、それで済むことなのに。
頭ではわかっているけれど身体が勝手に恐怖に震えている。
「それじゃあ、気を付けて帰れよ」
そんな先生の声が聞こえた途端、朦朧としていた意識がはっきりとして。
気が付いたら、荷物を片手に教室を飛び出していた。