麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集
その10
亜咲
その日、麻衣がショップにやって来た
よし…、この機を逃したら年越しちゃうわ
私は躊躇わなかった
「益子さん、すいません。ちょっと5,6分、外していいですか?」
「ああ、5分と言わず、用があるならしっかり済ませてくればいいって。亜咲ちゃん」
エンジニアの先生、益子さんにはいつもご配慮いただいて感謝だ
ここはお言葉に甘えよう
...
「麻衣ちゃん…!」
作業場の外には、ロックモータースのショップからちょうど出てきた麻衣と目が合った
「ああ、亜咲さん、お仕事ご苦労様です…」
麻衣はにこにこ顔でちょこんと頭を下げてた
かわいいや、こういうとこ…
「あのさ、ちょっと時間いいかな?」
「ええ、私はかまいません」
「なら、そこの自販機の脇で…」
私は作業場の隣のクリーニング店前に設置してある自販機脇へ麻衣を誘導した
...
「はい、これ…」
「ああ、すいません」
麻衣には、ぽかぽかの缶コーヒーを手渡してね
二人は自販機の脇に並んでしゃがみ、まずは白い息を吐きながら、温かい缶コーヒーを一口二口注ぎ込みんだ
「ふう…、今日は風も強いし冷えるから、これ、体の中が温まりますよ。ごちそうさま…」
「いや、急に呼びとめて悪いね。それで、アンタには取り急ぎ話しておきたいことがあってさ」
「はい。何でしょうかね」
「うん…、まず尋ねるけど…、例の情報通の友達から最近私のこと、何か聞いたかな?」
「いえ…、このところはないですね」
麻衣はきっぱりだった
その言いっぷりも、ごく自然体だったし…
やっぱ、まだ承知してないか、”このこと”は…
...
「じゃあ、端的に言うわ。私、学校辞めるんだ。年明けに…」
「…」
麻衣は私に顔を向け、目をぱちくりさせていたよ
「辞めるって…、亜咲さん!高校を中退するんですか?」
「うん。理由は南玉を辞めた時と一緒だよ」
「お母さんの病気…、ですか…」
「ああ、まあそうだね。時間とお金…。ホントはさ、春に南玉抜ける際、高校もって考えだったんだ。でも例の隣に住んでる子がさ、学校はもう少し続けた方がってね。忠告と言うかアドバイスというか…、その時は彼女に説得された形だった。でも結局は、今回決断に至ったって訳だよ」
「そうですか…。ちなみに、今回はその子に相談したんですか、事前に?」
「ああ、した。一応ね。でも、前回みたいに考え直したらとかは一切言わなかったよ」
「…」
麻衣…
亜咲
その日、麻衣がショップにやって来た
よし…、この機を逃したら年越しちゃうわ
私は躊躇わなかった
「益子さん、すいません。ちょっと5,6分、外していいですか?」
「ああ、5分と言わず、用があるならしっかり済ませてくればいいって。亜咲ちゃん」
エンジニアの先生、益子さんにはいつもご配慮いただいて感謝だ
ここはお言葉に甘えよう
...
「麻衣ちゃん…!」
作業場の外には、ロックモータースのショップからちょうど出てきた麻衣と目が合った
「ああ、亜咲さん、お仕事ご苦労様です…」
麻衣はにこにこ顔でちょこんと頭を下げてた
かわいいや、こういうとこ…
「あのさ、ちょっと時間いいかな?」
「ええ、私はかまいません」
「なら、そこの自販機の脇で…」
私は作業場の隣のクリーニング店前に設置してある自販機脇へ麻衣を誘導した
...
「はい、これ…」
「ああ、すいません」
麻衣には、ぽかぽかの缶コーヒーを手渡してね
二人は自販機の脇に並んでしゃがみ、まずは白い息を吐きながら、温かい缶コーヒーを一口二口注ぎ込みんだ
「ふう…、今日は風も強いし冷えるから、これ、体の中が温まりますよ。ごちそうさま…」
「いや、急に呼びとめて悪いね。それで、アンタには取り急ぎ話しておきたいことがあってさ」
「はい。何でしょうかね」
「うん…、まず尋ねるけど…、例の情報通の友達から最近私のこと、何か聞いたかな?」
「いえ…、このところはないですね」
麻衣はきっぱりだった
その言いっぷりも、ごく自然体だったし…
やっぱ、まだ承知してないか、”このこと”は…
...
「じゃあ、端的に言うわ。私、学校辞めるんだ。年明けに…」
「…」
麻衣は私に顔を向け、目をぱちくりさせていたよ
「辞めるって…、亜咲さん!高校を中退するんですか?」
「うん。理由は南玉を辞めた時と一緒だよ」
「お母さんの病気…、ですか…」
「ああ、まあそうだね。時間とお金…。ホントはさ、春に南玉抜ける際、高校もって考えだったんだ。でも例の隣に住んでる子がさ、学校はもう少し続けた方がってね。忠告と言うかアドバイスというか…、その時は彼女に説得された形だった。でも結局は、今回決断に至ったって訳だよ」
「そうですか…。ちなみに、今回はその子に相談したんですか、事前に?」
「ああ、した。一応ね。でも、前回みたいに考え直したらとかは一切言わなかったよ」
「…」
麻衣…