麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集
ゴールドシートを独占した少女/その5
亜咲
横田競子とは実の姉妹以上につながってる…
私は今までことある毎に、何度もそう痛感してきた
彼女が私のバイクの後ろに乗ることを決断してくれた、”あの時””も…
...
ケイちゃんには、私の気持ちは何も話さなかった
ただ一言、「そろそろ乗んないか?」と、時折誘っただけで…
でもあの子、バイクに乗せたがる私の心の内を最初から察していたみたいだった
彼女は私の思いを自分自身に向きあわせて、それこそ日々、戦っていたのかもしれないわ
「亜咲さんのうしろ、乗っかってみようかな…」
ある時、それは彼女の方からだった
いきなり…
...
彼女はバイクの後ろから、私の胴に強く両腕を巻き付てきた
微妙に全身が震えていたのが、その両腕から伝わってね…
私はその両腕を何度か掌で撫でてから、エンジンをかけた
その日の初乗りはほんの数分、スピードを控えて家の近所をひと回りって程度で終えてね
ケイちゃんちの前で止めたバイクから降りたケイちゃんは、ヘルメットを取るとニッコリ笑ってた
「亜咲さん、私を救ってくれてありがとう。お姉ちゃん…」
「…」
私は何故か言葉を返せなかった
...
以後、私のバイクの”うしろ”は彼女の指定席になったよ
それこそ年中、義理の姉妹は二人乗りで街中を走った
「…ここ、ゴールドシートってことになってるよ。ある人達の間ではさ」
ある時、バイクの二人乗りで買い物から帰って、庭に愛車を運んだあと、ケイちゃんは後部席を手で撫でながら囁くような口調でそう言った
「ゴールドシート…。なんだよ、それ…(苦笑)」
「亜咲さんにあこがれる子たちからしたら、よだれが出るくらいの特等席ってことだよ。私はそのゴールドシートに年中乗っけてもらってるからさ…。ずるい、うらやましいってね。正直、やっかまれたりはしてる」
「そうか…。でも、アンタがここに跨るまでには、”あの道程”があったことなんか、皆、知る由もないんだよな…」
「ああ、あれねえ…。はは…、亜咲さんにあの言葉を何度ももらい続けなかったら、私、血の染み込んだあのヘルメットから一生、解放されなかったかもね。亜咲さんのうしろに乗って、ギリギリのところの自分をちゃんと見つめることができた気がするんだ」
「ギリギリのところの自分か…。私は結構、目を背けてるかもな」
「あのさあ…、私みたいな中学生が余計な口出しかもしれないけど、南玉連合次期総長候補の亜咲さんと紅組トップの紅子さん双方のメッセンジャー、必要なら今度は亜咲さんから宛ててみたら?私は亜咲さんのお隣なんだから、”家の事情”とか知ってても別に不思議ないしね…」
「ケイちゃん…」
この子、私が迷ってるの、気づいていたようだ…
亜咲
横田競子とは実の姉妹以上につながってる…
私は今までことある毎に、何度もそう痛感してきた
彼女が私のバイクの後ろに乗ることを決断してくれた、”あの時””も…
...
ケイちゃんには、私の気持ちは何も話さなかった
ただ一言、「そろそろ乗んないか?」と、時折誘っただけで…
でもあの子、バイクに乗せたがる私の心の内を最初から察していたみたいだった
彼女は私の思いを自分自身に向きあわせて、それこそ日々、戦っていたのかもしれないわ
「亜咲さんのうしろ、乗っかってみようかな…」
ある時、それは彼女の方からだった
いきなり…
...
彼女はバイクの後ろから、私の胴に強く両腕を巻き付てきた
微妙に全身が震えていたのが、その両腕から伝わってね…
私はその両腕を何度か掌で撫でてから、エンジンをかけた
その日の初乗りはほんの数分、スピードを控えて家の近所をひと回りって程度で終えてね
ケイちゃんちの前で止めたバイクから降りたケイちゃんは、ヘルメットを取るとニッコリ笑ってた
「亜咲さん、私を救ってくれてありがとう。お姉ちゃん…」
「…」
私は何故か言葉を返せなかった
...
以後、私のバイクの”うしろ”は彼女の指定席になったよ
それこそ年中、義理の姉妹は二人乗りで街中を走った
「…ここ、ゴールドシートってことになってるよ。ある人達の間ではさ」
ある時、バイクの二人乗りで買い物から帰って、庭に愛車を運んだあと、ケイちゃんは後部席を手で撫でながら囁くような口調でそう言った
「ゴールドシート…。なんだよ、それ…(苦笑)」
「亜咲さんにあこがれる子たちからしたら、よだれが出るくらいの特等席ってことだよ。私はそのゴールドシートに年中乗っけてもらってるからさ…。ずるい、うらやましいってね。正直、やっかまれたりはしてる」
「そうか…。でも、アンタがここに跨るまでには、”あの道程”があったことなんか、皆、知る由もないんだよな…」
「ああ、あれねえ…。はは…、亜咲さんにあの言葉を何度ももらい続けなかったら、私、血の染み込んだあのヘルメットから一生、解放されなかったかもね。亜咲さんのうしろに乗って、ギリギリのところの自分をちゃんと見つめることができた気がするんだ」
「ギリギリのところの自分か…。私は結構、目を背けてるかもな」
「あのさあ…、私みたいな中学生が余計な口出しかもしれないけど、南玉連合次期総長候補の亜咲さんと紅組トップの紅子さん双方のメッセンジャー、必要なら今度は亜咲さんから宛ててみたら?私は亜咲さんのお隣なんだから、”家の事情”とか知ってても別に不思議ないしね…」
「ケイちゃん…」
この子、私が迷ってるの、気づいていたようだ…