麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集
ゴールドシートを独占した少女/その6
ケイコ&亜咲



亜咲さんはお父さんがバイクで事故に遭った時、2コ年下の私が実の娘である自分以上にショックを受けたと思ってるはずだ

それこそ、一生消し去れないほどの心の傷を負わせたと、ずっと気に病んでいたのかもしれない

そんな私に、自分がバイクを運転するようになると、うしろに乗せようとした

それが意味するところ…

あのバイク事故の生々しい残骸を目にして、私の心に埋め込まれた恐怖心を克服させる為の逆療養法…?

違う…

お姉ちゃんは、あの幼いころ目に焼き付けた一事だけで、物事を決めつけない心を持った

だからお姉ちゃんは、何かにつけて自分の中に自分で植えこんだ恐怖心に怯え、前に向かう気持ちを萎えさせてしまう自己呪縛から私を解放させようと…

妹の私からそれを…

それが、あの言葉に込められていたんだ

自分の運転するバイクの後ろに乗っかる決心は、自らに下す勇気を以ってと…

...


「ケイちゃん…、ウチのことは分かるわな、そりゃ…。はは…、もう今のバイトだけじゃお母さんの入院費、追いつかない。…南玉連合の総長なんかやってる場合じゃない。学校もやめる!」

私は一気に吐き出した

本籍東京もん、現住所だ埼玉の私ら二人…

その二人三脚で、私らは目の前から決して逃げなかった

幼いころからずっと…

でも…、いい加減逃げ出したい

すべてから、全部から…

...


「亜咲さん、要はおばさんの入院費でしょ?お金の問題だよね。それで、その解決策は今の収入を支えてるもの…。おじさんの慰謝料とかが増やせるかは私なんかじゃわからないけど、亜咲さんのバイト量が増えたら少しでも収入は増すよね」

「ああ…」

私は投げやり気味だったわ

半べそかいて

情けねーって…!

...


「…ギリギリで考えたらいいんじゃない、亜咲さん?究極の選択は人間、そりゃあ辛いけど…」

「ケイちゃん!いいよ、言ってみろよ。私にとって究極の選択なら、どっちだって!南玉と学校…」

私はこんなデキた妹の前で、なんとみっともない姿を晒してるんだって…!




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