麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集
始まりの予感/その11
ケイコ


紅子さんは、周りの目を気にしてないのか、あるいは意識しての上でかはわからないが、大声で続けた

「いいか!私らの地元、都県境一帯じゃあ、女が男の風下にはいねえんだよ!周辺の学校はみんな、男ども関係なしに自由にやりたいことできる。遠慮なしに、普通にな。こんな風土、他にあるかよ!それって、私らが作ってきたもんだろうが…!2年前も必死で戦って、守ってきたじゃねーか!」

みんな、食い入るように紅子さんを見てるし、聞いてる

たしかに、紅子さんが”現役”の頃から私らの地元じゃあ、族はレディースが主流だったわ

「ほかの奴ならまだしも、砂垣のようなヘタレの汚い足、一歩たりとも踏み込ませるな!そのために、OGの私らが気合い入れ続けてきたんだろ!現役の在校たちだけじゃ、無理なんだよ!」

砂垣順二…、いわゆる”排赤派”の急先鋒だったが、今は愚連隊系の幹部らしい

でも、2年前の抗争では、”天敵”紅子さんの軍に下った。これ、都県境じゃ伝説だよ!

「東京もんだ、だ埼玉だとか、つまんねえことどうでもいいんだ。くだらねえー。ミキ、いいか!ここにいる先輩らでも、そこの肝心なとこ忘れるようなら、お前がリーダーだ。妥協は絶対するな!がっつりやってやれ!」

ミキさんは小声で答えた

「わかりました。頑張ります」

ところが紅子さん、ミキさんのアタマを結構きつめにこついて、大声で怒鳴った

「バカか!このー!頑張るだけじゃ誰でもできるんだよ!死んでもやれ!なっ!」

ミキさんは下唇をかみしめて、ちょっとうるうるした眼でじっと紅子さんを見つめてる

他のみんな、つまりミキさんの”いっこ上の先輩”たちも、息を呑んでこの状況を見守ってる…

すごい”詰め”だわ、これ、一種の催眠術か?





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