あくまくんが愛してやまない。
「次、わたし移動教室だから帰る……っ」
彼からパッと視線を外し、後ろを向く。
このままじゃ、また恭平くんのペースに巻き込まれそうだもの。
移動教室は本当だし、そろそろ戻らなきゃいけない。
いい言い訳だと思いながら、彼を見ずに出て行こうとすると。
「ふーん、生意気じゃん」
不機嫌そうにつぶやいた彼に腕を引かれ、ふわっと抱きしめられる。
彼のやわらかい髪が、わたしの首に当たってくすぐったい。
ひゅっと空気が薄くなったのはわたしだけらしく、恭平くんは平然とわたしの頭にあごを乗せた。
「ききき恭平くん?!」
まって、まって。
それはいわゆる、バックハグというやつですか……?!
高鳴る鼓動は止まってくれない。
こういうときに限って、彼はぐっと近づいてくる。