あくまくんが愛してやまない。




「えっと……、保志。それやっぱり妄想じゃ……」



言葉に気遣うように、ゆっくりと口にした沢っちに涙がこみ上げる。

そんなわけないって言いたいのに、声が出ない自分が恨めしい。



こんなことで泣くなんて、沢っちを悪者にするみたいで嫌なのに、止まりそうにない。

おろおろする沢っちと泣きそうなわたしを見て、さっきまでスマホを触っていたエミがなにかを言おうとした、そのときだった。




「はいはい、俺の彼女泣かせないでね」





ふわっと独特の甘い匂いが鼻を掠めたと思うと、背中に大好きな人の温もりを感じた。


声を聞かなくてもわかる。

わたしを後ろから抱きしめている彼は、恭平くんだ。




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