あくまくんが愛してやまない。
恭平くんに真正面から問われた沢っちは、さっきの雰囲気とは一変して、怖い顔になっている。
いつも明るい沢っちからは考えられないほど真剣な表情に、少し戸惑ってしまう。
なんだか修羅場のような光景に、さすがのエミも困った顔をしていた。
「……そっちこそ、保志に近づきすぎじゃねえの?」
恭平くんに負けず劣らず、低い声。
どんどん空気が重たくなっているのが肌で感じられる。
涙はいつのまにか引っ込み、恭平くんの腕の中で身動きが取れない中、状況の理解に苦しむ。
教室中の視線を集めているのは自意識過剰ではなさそうだし……、これはかなりまずいことになる気がする……。
でもわたしが口出しなんてできない空気だから、おとなしく黙っていた。