あくまくんが愛してやまない。



わたしに巻きついている腕に、ぐっと少し、力が入った気がした。

どんどん険悪になっていくムードに、さすがに耐えきれなくなってくる。



いま恭平くんがどんな顔をしているのか見たくても、ぎゅっと抱きついてくる彼のおかげでそれは阻止される。


沢っちと恭平くんが話しているという謎の状況に、エミは助け舟を出すのを諦めたのか、見守りに徹している。


頭を抱えそうになりながらも黙っていると、沢っちが恭平くんに向かって言った。




「保志をもてあそぶの、やめろよ」




沢っちの言葉はとても真っ直ぐだ。

ハッとさせられるようなストレートな言い方に、恭平くんはすぐには言い返さなかった。



もてあそばれてないよって言おうとしたけれど、勇気が出なくてやめた。

このまま、恭平くんがわたしに飽きて、捨てられたらどうしようと考えてしまう。


想像するだけで恐ろしくて、慌ててネガティブな思考回路を消す。


……恭平くんは、なにを言うんだろう。



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