あくまくんが愛してやまない。



「あくまくんと別れてくれない?」



ハッキリと紡がれた言葉。

逃げ場のない言い方に、とっさになにも言えなかった。



宇野先輩は至って真剣に言ったらしく、わたしの表情をうかがうようにじっと見ている。

ほかの先輩たちは、わたしを威嚇するように睨んでいた。



恭平くんと、別れる……?

想像すると、実感のないようであるような、不思議な感覚に陥る。


そもそも、わたしみたいな凡人と、恭平くんみたいな人気者が、となりに並んでいるのがおかしな話なのだ。


だれよりもそう思っているのは、本人であるわたしだと自負している。

悲しいけれど、わたしよりも彼のとなりが似合う人は、うんとたくさんいる。


でもだからといって、わたしから彼を手放すことはできない。

好きで好きで仕方ないんだもん。


恭平くんを、ほかのひとに、取られたくないんだもん。





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