垂涎、午睡、うららかに【完】
「やったあ。わたし、カレー大好き。毎日食べてもいいくらい。
そっかあ。考えてみれば食材は同じだもんね。すごい。京極くんのおかげで失敗作がカレーになった」

「失敗ではないよ。食材はちゃんときれいな形をしていたし、味だって濃いっていうだけで」

形のことはともかく、「味が濃い」は失敗に入るんじゃないだろうか。
これは京極くんなりの気遣い、だろうか。

「小町さん、お腹減ってる?」

「減ってる。ていうか、この香りでお腹が減った」

笑って答えると、京極くんはお皿にカレーをよそい、テーブルに並べた。
二つ並んだ肉じゃがカレーとミニサイズのサラダ。
いまさらな気もしたけれど、わたしは「食べていっていいの? 調べものしてたんだよね?」と訊いた。

「いいよ」

素っ気なく返事をした京極くんが両手を合わせて「いただきます」と言ったので、わたしも同じように両手を合わせた。


うららかな昼下がり。

日当たりのいいリビングは、おひさまとスパイスで包まれた。
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