春色の屍 【完】
「まえに文化祭の展示用にみんなで絵を描いたんですけど、ぜんぜん終わらなくて。
けっきょく学校には内緒で、先生のアパートで夜中まで描いて……」

「それはきつい」

「でしょ? 当日、みんな目が死んでた」

桐野さんが自嘲するようにフッと笑い、少しの()をあけてから二人で同時に噴き出した。
気がつけば、お互いに敬語ではなくなっていた。

なんだ、よかった。普通に話せるんだ。

戻ってきた先輩は「なんか仲よくなってる」とうれしそうに言った。
その笑顔で、先輩が桐野さんと私をここへ誘ってくれた理由がわかったような気がした。

「仲よくなった記念ってことで、デザートもつけてね。よろしく」

桐野さんがツンと言い、先輩は仕方ないなあ、と笑った。


その日を境に、私は桐野さんとよく話すようになり、他の部員たちとも少しずつ話すようになった。
楽しくなってしまえば時間が過ぎるのは早いもので、先輩の卒業式はすぐにやってきた。

わかってはいたけれど、それでも毎日の中から先輩だけがストンと消えてしまうことがこわかった。
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