意味がわかると怖い話
同窓会
「いやぁ、まさか悟と舞香が結婚するとはな。確かに当時から仲良かったけどさ、よく喧嘩もしてたもんな」
「ほんとほんと! 大学卒業したら絶対すぐに別れると思ってたよな!」
「失礼ねぇ、これでも夫婦円満なんだから。……ね? 悟」
「ああ。この通り、うちはご近所でも有名なラブラブ夫婦だからなっ!」
「……うっわぁ〜。出た出た、悟の惚気モード。独り身の俺の前でイチャつくとか、絶対それ嫌がらせだよな」
「それよりさ、陽菜がシンママになってたとか意外だったよな」
「ほんとほんと。……相手の男とは結婚しなかったんだろ?」
「うん」
「シングルって、大変じゃない?」
「うん、子育ては大変だけど……。子供が成長するにつれて父親に似てくるのが嬉しくて、凄く幸せなんだ」
「そっか……。子供の成長を見るのは確かに幸せだよね。うちにも子供がいるからその気持ちは分かるよ。何かあったら言ってね? 私にできることなら協力するから」
「ありがとう、舞香」
「それよりさ、何で集合場所が学校なんだよ?」
「そりゃ勿論、俺らが四年間過ごした部室を見ておきたいからだろ。……悟だって懐かしいだろ?」
「まぁ、懐かしいっちゃ懐かしいけどさ……。どうせこの後居酒屋に行くんだから、最初から居酒屋集合でも良かったのに」
「まぁまぁ、七年振りなんだからいいじゃんか。──おっ! あったあった! ほら、見てみろよ」
「うっわぁ〜、懐かしい……。これ、合宿の時の写真じゃない?」
「だな。もう七年も前か……。俺らも老けたよな」
「テニスサークルとか言って、殆どが飲み会だったよね」
「酒好きばっかの集まりだったからな」
「俺は一応、真面目にテニスやってたけどな」
「何言ってんだよ、お前が一番飲んでただろ」
「ほんとほんと」
「いや、まぁ……確かに一番飲んでたかもだけどさ、酒癖の悪さで言ったら悟が一番だったろ」
「……うん。それは今でも変わってないかも。悟ってば、酔ったらすぐに脱ぎ出すんだから……。もう少しお酒は控えて下さいね、悟パパ」
「はい、すみません……」
「尻に敷かれてるのは相変わらずだなぁ。──あれ? これって何の写真だろ?」
「ああ、これはエコー写真とかいうやつだよ。……へ〜、赤ちゃんてお腹の中にいる時こんななんだ」
「……感動的だな。俺初めて見たよ」
「卒業前には妊娠してるの分かってたんだな。……でも、何で部室のアルバムに入れたんだ?」
「いや、それ私のじゃないよ。妊娠が分かったのは卒業してからだし」
「じゃあ、これ誰の? ……あ、何か書いてある。”2015年1月21日”だって」
「あ、それ私のだよ」
「なんだ、陽菜のだったのか。確か悟のとこと同じ年だったよな、子供。……てことは、この日付はこの写真を撮った日ってことか」
「ううん、違うよ。その日付はね、私の誕生日。……子供の父親と別れた日でもあるんだけどね」
「あ、何かごめん……」
「気にしないで、今は幸せだから。……あっ! ねぇ見て、この写真。悟ったらだいぶ酔っ払ってるね」
「うわっ、ほんとだ。居酒屋でパンイチになるとか、どんだけ破天荒なんだよ。──なぁ、悟。……あれ? 顔色悪いけどどうした? 大丈夫か?」
「…………」
「……あ、この写真にも何か書いてある。”もうすぐパパだね“だって。予言するとか、舞香すげぇな」
【解説】
大学在学中から交際していた悟と舞香。それは誰もが知っていたことだったが、実はその裏で陽菜とも付き合っていたことは誰も知らない。
七年前に清算したはずの陽菜との関係だったが、なんと陽菜は悟との子供を出産していたのだ。
二枚の写真とそこに添えられた文字で、その事実に初めて気付いた悟。彼の胸中は如何ばかりか、察することができるだろう。
──貴方は、大丈夫ですか?