剛腕御曹司は飽くなき溺愛で傷心令嬢のすべてを満たす~甘くとろける熱愛婚~
 それでも家を出なかったのは、弟の翔を守るため。それは母の遺言でもある。
 母は病弱な翔のことを心配していた。それに弟が元気になって、父の跡を継ぐことを望んでいた。
 喘息持ちの弟は小さい頃から入退院を繰り返していたため、学校にもあまり行けなかった。
 今はだいぶ症状が落ち着いてはいるが、台風が多い秋は気圧や湿度の変化で病気が悪化するから、山梨にある保養所で療養している。
そのため大事を取って、今日の式にも出席していない。
 弟は参列したがったが、私が『発作が起きたら周囲にも迷惑がかかるから、来なくていい』と強く言ったのだ。
 弟が大人になっても喘息の発作に苦しめられているのは、義母の虐待のせい。そんな弟を残して家を出るなんてできなくて、義母と義妹の嫌がらせにもじっと耐えている。
それもこれも弟にいずれ父の跡を継いでもらうためだ。
父は病弱な弟のことを疎ましく思っているから、私ひとりが家を出れば、弟は孤立してしまう。
 父は義妹が結婚したら、その相手に会社を継いでもらうことを考えているようで、義妹を社交の場に連れて行くことが増えた。
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