【完】シンアイ
うつむいて、親指を握りこむようにこぶしに力をいれる
信也さんは凛としていて、志乃舞さんの言葉に動揺する様子もなく
握りしめた私のこぶしを包み込むように上から手を重ねてくる
ゆっくり重ねて手をなでて、親指で手の甲をなでてからいつも通りのトーンで話し始める
「本当であれば、進学して高校や大学に行ったり恋愛したり、そんな経験を積んで結婚して子供を産んでいたかもしれない、そんなほかの未来を僕は見せてあげれない
僕は、・・・妻のこの先見つけるかもしれない経験や幸せを、僕といることで失っている
それが僕の唯一の後悔です
だからこそ、僕にしかできないことで幸せにしてあげたいと思っています
愛情は、誰にも負けないと自負しています」