【完】シンアイ
どちらについて行けばいいか分からず、とりあえず柊さんを待ってみる
慣れないスーツに、慣れない本社
準備をする柊さんを横目に自分の兄の姿を探したけれど、部署が違うせいか姿は見えない
「ごめんね、おまたせ
行こうか」
「はい」
エレベーターで地下駐車場まで行くと出た先に車が止めてあって、運転席には椎葉さんが座って待っていた
後部座席に乗り込んで、シートに背を預けて深く座るけど
パトカーよりこっちの方が明らかに乗り心地はいいのに、車内の空気はあの時よりも重苦しい
無音の車内で誰も口を開かなくて、過ぎていく知らない景色をずっと眺めて、スモークの濃い黒の窓からあまりはっきりと外は見えない
ただ、街灯が付き始めたのと外が暗くなった事だけは分かった