大人気アイドルとの恋は刺激強め
「受ける気になった!?」





「……まだ考え中、」





久しぶりに家でくつろいでると思えば、
開口一番だった。





「なーにをそんなに悩むの。悩むなんて、やりたいって思ってるからでしょ?難しく考えなくていいのにー」






ソファーに寝転んで台本を読むお姉ちゃんは、
「ね?お母さん!」って
キッチンに立つお母さんに声をかけた。






「李純がやりたいならやればいいよ。それでいろんな評価が来るだろうけど気にしないの。私はこれがいい!って思ったんだ!っていう強い気持ちがあれば、多少のアンチはスルーできるんだから」





「そーそー!やりたいんならやるべし!」






「まあ、怖いのもわかるけどね。でも、人から評価されて、任せたいって思ってもらえたのはすごい光栄なことなんだから、李純の思うようにやってみるのがいいとお母さんは思うよ」





やりたいようにやってみる___





それをやって受けいれられなかった時が怖い。





ネガティブだ。
もっとポジティブに考えた方がいい。






頭ではわかってるけど、自分の心が
怖いよって訴えてるんだ。







「とりあえずさ、台本読んでみなよ。たぶん読んだら書きたくなる」






今の今読んでいた台本を差し出される。





つい先日もらったばかりのはずの台本は
すでに角がまるまっていたり、
所々シワがついていたりしている。

様々な色の付箋が飛び出していて、
ペンでいろいろ書き込まれたこの台本からは
お姉ちゃんの作品に対する思いとか真剣さが
感じられる。

読み込んで読み込んで、
それでもまだ足りないって
貪欲に作品の世界観を作るためにお姉ちゃんが
一生懸命頑張っているのを、近くで見てきた。

この作品だけじゃない。

今まで沢山の作品に出演してきたお姉ちゃんが
持っていた台本たちはすべてボロボロ。

弱肉強食の芸能界で
異例のスピードで活躍の幅を広げていけるのは
この努力の賜物なんだ。





「私は、李純の作る歌に乗せて、この作品をみんなに届けたいって思った。だから監督に直談判した。受けるかどうかは李純の自由。でも、私みたいに李純の歌を楽しみにしているファンの人が沢山いること、忘れないで」





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自分の部屋に入って、
そっと台本の表紙を撫でる。






『ジャスミン』と書かれたこの題名に
どんな意味が込められているんだろう。










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