優等生の腹黒@学園ラブ物語 キアラとカシアス 魔法の恋の行方・シリーズ9
「翼についた、糸をはずさないと。
しびれがひどくなるから。
後ろを向いて、翼をひろげてくれ。
僕がはずすから」

キアラは何も言わず、背中を向けて翼を広げた。

広げられた透明な翼は、ほのかに発光して柔らかな陰影をつけていた。

この子は薔薇のフェアリーだ。

それも闇夜に密かに香る、深紅の薔薇。

カシアスはひざまずいて、
その翼の先端に、自分の唇をつけた。

それから、ブレスレッドの宝珠をひとつ取って、
唇をつけた部分に押し込むようにあてた。

宝珠は水に溶けるように、翼の中に浸み込んでいく。

「えっ?なんかピリッときたけど」

キアラが振り向いた。

「ああ、糸が引っかかって、引っ張った。ゴメン」

カシアスは、宝珠を埋め込んだ部分を、そっと指で触れた。

その痕跡は、誰にもわからないはずだ。

自分の魔族印、自分の所有物につけるもの。

魔族は、キラキラした美しいものを収集したがる性癖がある。

カシアスは満足げな笑顔で、キアラに言った。

「全部、取れたよ。よかった」
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