まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
針の筵な視線と悪口を火宮先輩の影に隠れるようにして通り、ついて行った先は、校舎裏の人目につかないところ。
告白、いじめにうってつけの場所だ。
目の前の彼がここの常連という噂をよく聞く。
もちろん、女子達の告白で、皆もれなくこの男にフラれているわけだが。
というのは今はどうでもいいとして、今回の使用用途は圧倒的後者でしょう。
出会って間もない彼が告白とか、私に限って、甘酸っぱい未来はありえない。
昨日逃げなければ、こんな事にはならなかったのでしょうか。
でも、起こらなかったことをどうこう考えても無意味。
問題は目の前の状況をどう切り抜けるかということ。
殴ったら記憶が飛んだとか、漫画的展開ないかなぁ……。
ここまでついて来てしまった私が言うのもなんだけど、実は勘違いでしたと思わせたい。
ぼっちが人気者に逆らえなくてついて来ちゃったんですー。
私なんにもしりませんー。
って、言えないのが小心者たる所以である。
「……何で私だと?」
イケメンに睨まれて、口からは認めるみたいな発言がでてしまう。
でも、知りたくはある。
私みたいな一般人が、イケメンの記憶に残るとは思えないのだ。
「お前みたいな特徴的な顔、忘れられるわけないだろ」
「ひどい……」
不細工って言ってる。
確かに、美少女の妹には劣るけど、そこまで酷いとは思いたくなかった。
「単刀直入に言う。お前、どこの手先だ?」
「どこの……」
「火宮ではないな。あそこが俺の味方をするとは思えない」
「はあ……」
「何故昨日あそこにいた。何が目的で俺に近づいた」
「ぇと………」
意味のわからない私は、気の抜けた返事を返すだけだ。
不細工と言われた衝撃から立ち直れないのもある。
彼は制服のボタンを引きちぎり、それを刀に変え、一歩距離を詰めてきた。
「お前の連れてた式神、結構高位のやつだろ?」
これ私疑われてますよね。
イカネさんどうしよう……。
「わたくしをお呼びですね」
心の中で助けを求めると、彼女は横に現れた。
金糸の美しい長髪とふわふわした天女の衣装を靡かせている。
「イカネさん………」
安心させるように綺麗な微笑みを見せてくれた。
昨日のは夢じゃなかったんだと再認識した。
火宮先輩は刀を構える。
イカネさんはおもむろにそれを指差す。
「うぁっ!」
「わたくしの友人にこんなものを向けることは許しません」
刀の先からドロドロに溶けて、火宮先輩が投げ捨てた後は灰も残らない。
「お前……」
「あら、よろしいのですか? 人間ごときが神様にそんな口聞いてしまって」
「くっ………」
悔しそうに顔を歪める火宮先輩。
悪役っぽいイカネさんも素敵です。