まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
「月海さんは、月海さんの思うままに。それが私の幸せですから」
火宮桜陰の言葉を信じるなら、これも私が言わせてしまっているんだよな……。
「今までごめんなさい。もう、無理しないで、言いたいことがあったら言って欲しい。これから先も、友達でいられるために」
きっと、今を逃せば機会はない。
我慢し続ける関係なんて、長く続かないし、身体に悪い。
わだかまりは解消しておくべき。
私のわがままに付き合わせて、無くしてしまうなんてもったいないわ。
「わたくしの使命は、妖魔を斃し、人々を守ることです。そのために人に使役され、この力を振るっています」
「神は式神として呼び出されてからでないと、この世に干渉できないんだ」
本来なら、火宮桜陰のような戦う意志のあるものに呼ばれるべき存在だった。
「ですが、我が主人が戦うなとおっしゃるのでしたら、わたくしはそれに従います」
「召喚した術師の命令には逆らえないからな」
先輩、解説挟んでくれてありがとう。
つまりは、私が友達になって欲しいと望んだから、友達として振る舞ってくれたのだ。
戦いもできない人間に呼び出されて、無理させていたのだろう。
「………それが、イカネさんのしたいこと、するべきことなら、私にも手伝わせてください」
「月海さん……」
「いや、手伝うなんて言葉は変だね」
本来は繋がるはずの無い縁ができたんだ。
この縁を切らさないために。
つまり、私の為に。
「私の意志で。あなたと一緒に、戦わせてください。あなたの隣で戦う権利を、私にください」
「………いいんですか? 危険ですよ」
「その危険な中に、イカネさんは行くのでしょう?」
私ひとり護られてなるものですか。
それに、イカネさんの為に戦う覚悟なんて、とっくにできてるんですよ。
でないと、理不尽俺様大魔王に頼んでまでこんなところに居ない。
私はイカネさんに相応しくなりたい。
私が戦うことがイカネさんの為になるなんてもう、利害が一致しちゃってますよね。
「私の目指す、対等な友人である為に」
右手を出し、握手を求めた。
「これからもよろしく、イカネさん」
「っ、ええ。ええ」
私の手を両手で包み込むイカネさんの笑顔は、大輪の花が咲くようだった。
尊すぎて召されてしまうわ。