まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー


袖で顔を隠しながら、隣の火宮桜陰に尋ねる。



「……生まれ変わりって?」



「普段は神界に居る神だが、稀に地上で生活する事もあるんだよ。その際に人間を器にして生まれ、死ぬ。そして神界に戻る訳だ。その、人間の器に入っている状態を、俺たちは便宜上【生まれ変わり】と呼んでいる。生まれ変わりの時は神界の記憶が無くて、見つけるのは至難の業だ」



「それで、こんなに騒いでいるわけですか」



「生まれ変わっても神の力はそのままだから、彼女、相当強いよ」



「…………」



「道理で、親戚一同集められるわけだ。次期当主の花嫁で、コノハナサクヤヒメの生まれ変わりが来るんだ。集めない方が無礼というもの」



まさか妹がそこまで珍しい存在とは思わなかった。

………いや、超絶美少女なところは唯一無二か。



食事が運ばれてきても、食べるのそっちのけで彼らは陽橘様と咲耶様を褒め称え続けた。

蚊帳の外な私は目の前の膳に手をつけようとしたところを、火宮桜陰に制される。



「やめとけ。毒入りだ」



「っ………!」



声が出そうなのをなんとか抑えた。



「…………………先輩」



何をしたら、身内に毒を盛られるようなことになるんだ。

流石の私も毒はない。



「奴らは無能な俺を排除したいのさ」



悲しそうな表情を見せる先輩に、こっちまで悲しくなる。



「無能って………」



「ただ霊力が少ないだけなんだが、それが致命的なんだよ」



名家というのも大変だな。

お世話になってる先輩の力になれたらとは思うけど、こればかりは無理ですし。



「いつもはこの空間に俺ひとりだからな。お前がいて、心強いよ」



「………デレた?」



「やかましい」



ぺしっと頭をはたかれた。


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