まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
彼の頭上に、炎を纏った大型の鳥が召喚される。
「どんな不正を使ったんだい?」
「……戦場を用意したのはお前だ。俺たちが不正なんてしようがないだろう」
「五月蝿い! 不正でもしなければ、生まれ変わりがそこの不細工に負けるわけないんだよ!」
火でできた龍を浮かべる火宮陽橘。
対するイカネさんは、私を守るように前に出て、水の龍を浮かべた。
第二回戦が始まろうとしたその時。
「なんの騒ぎだ?」
どことなく火宮兄弟に似ている男性が現れた。
火宮桜陰の数十年後は、こんな顔になっていると言われても疑わない。
「当主……!」
流されて戻ってきた周囲がざわめく。
当主ってことは、火宮兄弟の父か。
隣には美人な奥様もいる。
当主は、水浸しの大広間を見て状況を察したのか、私に向かって頭を下げた。
「この度は、愚息とその花嫁が迷惑をかけた」
「いいえ! 頭を上げてください。私も無関係ではないんですから」
妹とその彼氏が相手なんだ。
赤の他人とは言えない。
「父さん! なんでその女に頭を下げるんだ! そいつは、僕の咲耶に酷いことを……!」
「陽橘、黙りなさい」
「いいや黙らない! 咲耶は、コノハナサクヤヒメの生まれ変わりなんだよ!」
「黙りなさい!」
「………っ!」
現当主の父親の剣幕に、流石の彼氏君も口をつぐんだ。
「この方は、スサノオノミコトの生まれ変わりだ」
「はぁ!?」
周囲の注目が私に集まる。
私もびっくりだよ。
「三貴神の生まれ変わり相手に愚かな事を………。息子にはきつく言って聞かせますので、この場はどうか、寛大な対応をお願いいたします」
「あの、私は…」
「二度はないと誓えるのか」
「先輩!?」
「簡単に許すんじゃねぇぞ。甘さを見せればこっちがやられる」
「桜陰、失礼だろう。お前には関係ない。下がっていなさい」
「うるせぇ。こいつは俺のだ」
腰を抱く腕に力が入る。
現当主は目を見開いたが、すぐに真剣な顔に戻る。
「それは本当か?」
「ええと、桜陰先輩には良くしていただいてます……?」
私も両親に挨拶コースですか。
だけど、面と向かって下僕扱いされてますなんて言う勇気はなかった。
理不尽俺様大魔王でも、時々優しかったりするのだと、言い聞かせることにした。
嘘ではない。