まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
翌日、おそるおそる家に帰る。
あんなことがあったんだ。
お通夜の雰囲気になっていてもおかしくはない。
それ自体は基本どうでもいいが、原因が自分だと思うと遣る瀬無い気持ちになってしまうというもの。
妹はフラれてしまったのか。
そして荒れてしまっているのか。
運命の玄関を開けると、父、母、妹、そして彼氏君の靴があった。
リビングからは変わらない賑やかな声。
私はいつもと変わらずこそっと部屋に籠る。
………あれ?
昨日のは夢か何かだったっけ。
その答えは、翌日の昼休みに分かった。
「お前は俺に任せて、陽橘はコノハナサクヤヒメを捕まえておけという話に落ち着いたらしい」
購買に行くところを火宮先輩に捕まり、校舎裏の目立たないところでパンをかじる。
「二人とも無くすのはうちの大きな損失だ。賢明な判断だろう」
「そうですか」
うちの家族が悲しむようなことがなくてよかったです。
主に、妹の癇癪が怖いので。
「俺の、家での地位も上がって助かったぜ。嫌がらせが随分減った」
「それはいいことですね」
「お前のおかげだ」
「……頭撫でるのやめていただきたいのですが」
さっきサンドイッチを直に触ってた手でしょう。
パンくずを拭いているんじゃないでしょうね?
「あはははは」
わしゃわしゃとかきまわされ、モサモサになってしまった。
手櫛で整えながら、空を仰ぐ。
ああ、雲が多い。
「ん?」
今何か横切ったような……。
「どうかしたか?」
「いいえ、何も………」
気のせいかな。
その後、昼の授業を受けて、放課後。
一人になった教室で、それは来た。
「…っ!」
反射的に避けて振り返ると、床に釘が刺さっていた。
こんなの、さっきまではなかった。
嫌な気配がする方を見ると、淡く光る五寸釘が6本、宙に浮いている。
「ええー………」
これ、もしかしなくても私が狙われてるやつですか。
2本が私に先端を向け、発射されたところを、横に跳んでかわす。
その着地地点を狙って飛んでくる1本に左手をかざすと、水流が出て……。
「っ!」
くれなかった。
五寸釘は手のひらを貫く。
痛みに悶える暇はなく、残りの五寸釘が私を仕留めにその先端を向けてきた。