まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
ある男の策略
「また、あやつを始末するのに失敗したらしいな」
「面目次第もございません」
草木も眠る夜。
大広間に集まったのは、前回と同様のメンバー。
そして、前回と同様の会話であるが。
「よい。状況が変わった」
次はないと脅されていた一同は命拾いした。
むしろ、成功していた方が命が危うかったやもしれん。
「して、足はついておらぬな」
「そこは抜かりなく」
あれに懸想している女に丑の刻参りに必要な道具を渡して、あれを消すように誘導したが、なぜか呪いの対象はスサノオノミコトの生まれ変わりだったのは、不幸中の幸いか。
一般人に害が及ぶようなら責任問題だが、あの娘は我らの障害。
いずれ消さねばならぬ相手。
「しばらくあやつのことは様子見とする。異論はないな」
「はっ」
当主の声に、我々は深く頭を下げた。
反論などしようものなら、即座に首を刎ねられてしまうので、表面上は忠臣を装う。
当主はスサノオノミコトを引き入れるつもりらしいが、いくら三貴神の一角といえど、火の家系に水の神など必要ない。
そもそも、生まれ変わりが見つかることの方が少ない。
一時代に2人の生まれ変わりが同じ家に所属することなど、過去になかったのだ。
他の家に生まれ変わりがいるという情報もない。
火宮家は、次期当主様のコノハナサクヤヒメの生まれ変わりだけで十分。
幸い、当主は次期当主に陽橘様を選ぶことに変わりはない。
今になって、スサノオノミコトの生まれ変わりを味方につけた桜陰を次期当主に推薦する声も上がりつつあるが。
そんなもの、許されるはずがないだろう。
桜陰に味方するスサノオノミコトの生まれ変わりを始末して、ゆくゆくは桜陰も始末する。
その判断が正しいと考えてくださるに違いない。
もしかすると、前回の失敗も、スサノオノミコトの生まれ変わりが手を貸したせいかもしれないのだ。
そう考えると、あの娘の危険度は跳ね上がる。
まったく、あれは無能のくせに、どこで見つけてきたのか。
厄介な者を味方につけたものだ。
生まれ変わりは優秀ゆえ、我らの業界では引く手数多だ。
あの娘も、当主の誘いを受ければ幸せに暮らせただろうに。
雑魚怨霊のようにしぶといあれらをいかにして消すか、次の作戦を練らねば。