まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
3
成長
コノハナサクヤヒメが植物を操ったように、スサノオノミコトは水を操る。
咲耶との一戦で、自身を霧状にし、大量の水を生み出した感覚はまだ残っている。
家族が寝静まった夜。
私はお風呂に浸かりながら、イメージした。
人差し指をたてて、その先から水飲み場のように噴き出す水。
しかしなにも起こらない。
試しに同じ指先にマッチほどの火を灯し、すぐ消火した。
うん、これはできる。
ここで疑問。
まともに水を操れない私は、本当にスサノオノミコトの生まれ変わりなのでしょうか。
妹がコノハナサクヤヒメなのは間違い無いでしょう。
あれだけ植物を自在に操っていたのだから疑うまでもない。
生まれ変わりを見つけるのは難しいと言っていた。
それなのに、こんな近くに2人も存在するなんて、都合が良すぎるといいますか。
火宮父の勘違いと考える方が自然でしょう。
五寸釘に襲われた時、なにもできなかったじゃないか。
練習でできないものが本番でいきなりできるようになるものか。
あれは一度きりの奇跡だったのだ。
使えない能力を当てにするのはやめよう。
一握りの者しか、式神使いは術師にはなれないのだと、火宮桜陰に初めに言われたことだ。
それでも、やってみなきゃわからないと、両立を目指して今日までやってきた。
しかし結果は、焚き火止まり。
海の神だから火炎の術が使いづらいという言い訳も通らない。
…………もう、潮時なのだろうか。
焚き火は焼きマシュマロ専用で。
戦いは、おとなしくイカネさんを呼び出して、命令して、自分は安全なところで眺めて………。
なんて、やっぱりそんなのは嫌だ。
私はイカネさんと対等な友人でありたい。
本人にもそう宣言した。
でも現実は甘くなくて。
かといって、強くもなれていない。
私に伸びしろはあるのだろうか。
そもそも、火柱をたてる術をつかって焚き火しかできないわけで……。
けれど、もっと威力のある術を使えば、込める霊力の量を増やせば、焚き火以上の火が出せるかもしれないし。
でも………。
同じ所をぐるぐると考えていたら、いつのまにか眠ってしまったらしい。
翌朝、冷たい湯船で目を覚ました私は、見事に風邪をひいていた。