まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
完全復活した私は翌日の放課後、火宮家の稽古場にいた。
日課となった焼きマシュマロを作っていると。
「お前の焚き火は一向に成長しない」
「うっ………」
火宮桜陰の先制攻撃。
「これは本来は火柱を生み出す術だ。なのに、十分の一以下の威力しか出ていない」
「ううっ………」
「コノハナサクヤヒメの蔦に焦げ一つ付けることすらできなかったな」
「うぐっ………」
「果たして、料理以外に使い道があるのか疑問に思うレベルだ」
言葉の暴力にフルボッコにされて、オーバーキルだ。
私だって、分かってはいた。
気付いていたさ。
でも。
「うっうっ、そんなに言わなくても………」
出来ない事実ほど耳が痛いことはない。
「言わなかったら、成長するのか? 今日まで特に何も言ってこなかったが、成長したのか?」
「うううっ…………」
泣き真似すら虚しい。
「術師の道は諦めて、召喚一本に絞れ」
「ううううっ…………」
ついに死刑宣告が……。
先輩に見限られた。
ほんとに泣きそうだ。
イカネさんごめん、あなたと並び立って戦う約束が………。
「………と、言いたいところだが、まだ試していないことがある」
「………う?」
「召喚の維持には膨大な霊力が必要となる。霊力が枯渇すると頭痛、吐き気、失神などの症状が出るものだが、お前にはそれがない」
「うん」
だから、風邪をひいた時に聞いた、イカネさんを召喚することで体調が悪くなるという彼らの言い分がわからなかった。
「つまり、霊力自体には余裕があるということだ。……この場合、神力だな」
「それってつまり………?」
「スサノオノミコトの力を使うぞ」
私も考えていたことだ。
「でも、あの日以来使えたことなんてないですよ……?」
五寸釘に襲われた時ですら発動しなかったんだ。
「焚き火をもっと頑張る方がいいのでは?」
今は無理でも、ある日突然覚醒して彼氏君のような炎の龍を作ったりできるかもしれない。
「使えもしない火炎の術にこだわる必要はない。威力が証明されているスサノオノミコトの方が効率的だ」
「いやだから………」
「お前が悩んでいることはわかってた。俺も考えた。考えた末に、これを作った」
「えっ、ちょっ………!」
いきなり正面から覆い被さられた。
火宮桜陰の顔が真横に来て、息が肩にあたる。
イカネさんほどではないけど、綺麗な顔してるんだよな。
さすがは学校一のイケメン。
改めて意識すると緊張で心臓バクバクして、目をぎゅっと閉じた。
首の後ろで小さく金属がぶつかる音がやけに大きく聞こえる。
彼が離れたのを感じて目を開く。
「うん、さすがは俺様」
私を見る先輩は満足げだ。