まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
「いいんです、戻ってくれて、ほんとうによかった………」
イカネさんに悲しそうな顔をさせているなんて。
すこしぼんやりしているうちに、なんてことをしていたのだろう。
あんなの、私の目指す対等な友達じゃない。
当時の自分を引っ叩いてやりたいわ。
「でもさ、イカネさんをナンパする人たちが許せなかったんだ。イカネさんが盗られる気がして………心が狭くてごめんね」
「いいえ、困っていたのは確かですわ。助けてくださりありがとうございました」
「えへへ、どういたしまして」
隣に座るイカネさんの腕に抱きついた。
「いでっ!」
また頭をはたかれた。
「何するんですか先輩……。これは暴力ですよ」
「わりぃな。またおかしくなったかと思った」
「失礼な!」
ヨモギ君には膝をはたかれた。
こんなことまで真似せんでよろしい。
子どもの姿とはいえ、神使の子。
かなり痛かったぞ。
「つか、いいかげん、その前髪邪魔じゃね?」
顔の前に迫る火宮桜陰の手をはたき落とす。
「いいんです、ほっといてください。これでもちゃんと見えてますから」
言いながら周囲を見渡す。
元影だった人たちは、シャチやイルカの背に乗ったり、エイの上や亀の甲羅で寝ていたり。
マグロとカツオがジェットコースターと並走していたり。
今は一帯が海中遊園地のようだ。
「………これ、私がやってるんですよね」
幻想的な風景を眺めていると、呟きが漏れてしまう。
「楽しそうだ………」
「力の使い方を間違えなければ、たくさんの人を笑顔にできるんだよ」
「今の月海さんは、みなさんに夢を与えていますよ」
「………そうだといいな」
夢のような時間は夜明けまで続いた。