まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
イカネさん曰く、原因の場所は、私の通う学校だ。
上空で渦を巻く雲が目印らしい。
少し前に出たばかりなのに、再び登校する羽目になるとは……。
車通りのない道路を横断、人通りの全くない通学路を走る。
校門を抜け、昇降口に来たところでバキバキッと何かの壊れる音がした。
「ひいっ!」
誰もいない夜の学校は、悪いことしてる自覚があるから心臓がバクバクなのだ。
そんななかの不意打ちは、悲鳴もでるというものよ。
いや、眠ってるならきっとバレないだろうけども。
そういえば、なんで私は何ともないんだろう。
イカネさんのおかげかな?
「……っはあ、はぁ………あの方向は、体育館かなっ……」
「参りましょう」
イカネさんは全力疾走で息切れした私の手をとって地面の上を滑るように移動した。
この、移動床に乗っているような感覚。
さっきイカネさんの後ろを走ってて気付いたけど、イカネさんあなたやっぱり走ってませんでしたね。
流れる景色は速いが、風は感じない。
どんな理屈かわからないけど、いつまでも運んでもらうわけにはいかないから、今のうちに上がった息を整える。
「はぁ……ゲホッ…………」
……あ、なんか酔いそう………。
下向くと酔いやすいんだよね。
進行方向をぼんやり見ていると、しばらくして景色が止まる。
到着したそこの床は凹み、壁は穴が空き、天井からはポロポロと破片が降ってくる。
あのあとも何度か続いた激しい戦闘音はやはり体育館からだったらしい。
左側に、大型の蛾が鱗粉を纏って飛んでいて。
右側に、ボロボロの男子生徒が頬を流れる血を拭って刀を構えなおした。
どう見ても、無傷な大型の蛾が有利なこの状況。
男子生徒の足元の中型犬が威嚇するように吠えるが、蛾の羽撃きで彼らは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。